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 あの不機嫌そうな顔の人かな? あの人、見たことなかったし。

「じゃあ保健室に行ったら会計さんに会えるんだね?」
「多分な。場所分かるか?」
「うん、まあ大丈夫じゃない?」

 一応場所は知ってるわけだから、迷ったとしてもそこまでじゃないだろう。

「適当だな…大丈夫かよ?」

 その言葉ににっと笑って、僕は体を翻す。そして手をひらひらと振って、二人から離れた。














 歩いていると、前方から見知った人が歩いてきておやおやと笑ってみせた。するとその人は何やら怒った様子で僕に大股で近づいてくる。

「おい! 早速問題起こしやがったな!」
「ああ――帽子屋のこと。もう知ってるんだ?」
「知ってるんだ、じゃねーよ!」

 会長さんは手を振りかぶった。僕はそれをひらりと避けて、にひ、と笑う。

「死ななかっただけよかったじゃない」
「な……」

 会長さんはハッとした顔になって、顔を青くする。次第に顔を引き攣らせて頷いた。

「まあ…そうだな」
「安心してよ。銃は使わないと思うから」
「…当たり前だ」

 溜息を吐いて、とにかく、と少し苛立ったように言った会長さん。

「問題は起こすなよ、ホント。仕事これ以上増やすな」
「はいはい分かってるよ」
「お前絶対分かってねーだろ…」
「それよりさあ、保健室ってここの近く?」
「おい、話逸らすなよ。……って、保健室だぁ?」

 僕は口角を上げながら頷く。じろりと僕全体を眺めて、ぐっと顔を顰めると、僕を睨んだ。

「…何の用だよ」
「ちょーっと、会計さんに用があってね?」
「おい、俺はさっき問題を起こすなと言ったんだぞ」
「大丈夫だよ、別に問題は起こさないから。会長さんには迷惑かけないよ」

 にこにこと笑ってみせれば、会長さんは深い溜息を吐く。そして少し考える素振りを見せた後、舌打ちした。

「分かった、あいつに会ってもいい。――ただし、俺も行く」

 ふうん?
 問題を起こさせないように? それとも、……僕から守ろうとする、とか? 少し意外だった。会長さんは仕事が忙しいって言ってたし、会計さんたちにはあまりいい感情を持っていないようだったから。

「…うん、良いよ。一緒に行こうか」
 なんだかワクワクしてきたなあ。
 僕は会長さんから視線を外してにやりと笑った。

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