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「おーい、俺は? 俺は?」
「レンも好きだよ」

 そう答えると、りゅーいちくんの顔が曇った。あららら? ほんとーに、りゅーいちくんって、僕のこと好きなのかな? ふうん…。まあ、僕にとって大して重要なことじゃないけど。僕のことが嫌いっていう感情を剥き出しにしてるのは見てて面白いけどね。
 それに。仮にりゅーいちくんが僕とそういう間柄になりたいと思っていたとしても、それは無理だ。りゅーいちくんは人間界の「人間」、僕はワンダーランドの「猫」なんだから。
 だからごめんね? と笑みを深くしながら謝る。――ここにいる間は、恋人擬きのお遊びに付き合ってあげるよ。気が向いたら、だけど。

「…あ。僕、さっき帽子屋に蹴飛ばされた茶髪の人に会いたいんだけど、どこにいるかな?」
「は? 蹴飛ばされたって…会計? なんであいつなんかに会いたいんだよ」

 ああ、あの人は会計さんか。
 僕の言葉を聞いてりゅーいちくんの顔が歪む。それは、ただ単に会計さんが嫌いなのか、それとも僕が会いたいと言ったからなのか。…どっちでもいいか。

「ちょっと言いたいことがあってね」
「言いたいこと?」
「そ」

 含みのある顔を意識して笑うと、りゅーいちくんは口をへの字に曲げて黙った。訊いても答えてくれないと思ったのかな? なかなか敏いね。

「会計なら保健室じゃないか?」
「保健室?」

 レンは頷く。
 保健室──あぁ、一度会長さんを運んだ場所か。

「何でそう思うの?」
「風紀委員長が引き摺って連れてってたの見たんだよ」
「引き摺って…」

 りゅーいちくんは顔を引き攣らせる。風紀委員長。初めて聞く名だ。それは誰なんだろう?


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