僕と会計さん(沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり)

(side:チェシャ猫)

「俺ァ、そこらへんぶらついてくるわ」

 イカレ帽子屋は突然そう言った。僕は一瞬既に問題を起こしてるこの男を野放しにしていいのか迷ったけど、考えるのが面倒になって、どうでもいいやと頷いた。

「…他の奴に浮気しやがったら…わかってんだろーな?」

 ギロリとりゅーいちくんとレンを睨んで厭味ったらしい笑みを残し、のそのそと歩いて行った。睨まれたりゅーいちくんは青ざめ、レンは爽やかな笑みを浮かべていた。なんて対照的なんだ。
 というか、浮気って言葉使うのやめてほしいなあ。僕は別にイカレ帽子屋が好きなわけじゃないのにね。だから僕が誰と何をしようが、浮気にはならない。

「…浮気、って」

 なんだよ?
 りゅーいちくんが青ざめた顔のまま、僕を睨む。僕はにこりと笑った。

「気にしないでよ、奴の妄言だから」
「はあ…」

 まだ腑に落ちないところがあるみたいだけど、あのイカレ帽子屋はそういうことを平気な顔で言うやつだと早々に理解したらしいりゅーいちくんは、それ以上何も言わなかった。代わりに、レンが余計なことを言ってきた。

「チェシャの本命は俺だもんなー?」
「はあ?」

 りゅーいちくんはぐぐっと眉を寄せた。
 僕の肩に手を回してくるレンはにやにや笑っていて、とても楽しそうだ。この前もこんなことがあったなあとぼんやり思っていると、りゅーいちくんによって僕とレンは引き離された。むっとした顔をしているのがおかしくて、僕はふふっと笑う。

「りゅーいちくんて、僕のこと好きだよね」
「なっ! えっ!?」

 カッと目を見開いて顔を赤くする。可愛いなあ。僕はぺろりと唇を舐めた。そして首を小さく傾げながら、にいっと笑う。

「僕もりゅーいちくんのこと、好きだよ?」

 更に顔を赤くするりゅーいちくんを見て、こういうところもヤマネに似てるなあと嬉しくなった。

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