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 大体、あいつ焦ってたかなあ? 嫌そうな顔をしてたから、カズマの言葉に乗っかって触ろうとしたけど。…まあ、ちょっと興味あったし。別に本物だとは思ってなかったけど、なんていうの? 好奇心?
 その好奇心の所為で今俺はここに寝ているんだけど。

「本物、ねえ?」

 仮に本物だったら、あいつ人間じゃないってことだよね。じゃああの帽子の男も…? もしそうだったら間違いなく悪魔だよ…あいつ。あんなに恐ろしいやつ初めて見たもん。会長も怒った時は怖かったけど、あんなの比じゃない。
 そういえば、もう随分生徒会室に行ってないな。会長も一緒に遊んでたはずなのに、いつの間にかいなくなってたよなあ。俺たちの代わりに仕事やってるん…だよね。罪悪感で胸がちくりと痛んだ。

「おい」

 うわ、会長のこと考えてたら会長の声が聞こえてきた。

「おい」

 これ幻聴ってやつ? うわーやべえ。どうせなら会長なんかじゃなくてカズマが良かったな。

「おい! 起きろよ!」
「いっ!?」

 ガツンと頭に衝撃が伝わった。驚いて目を開けると、そこには拳を握って仏頂面している――隈の酷い会長がいた。

「え? え…会長?」

 幻聴じゃなかったんだ…。

「風紀の野郎から連絡があったんだよ」

 大きな溜息を吐いた会長の顔は、普段堂々として格好いいのが嘘のように酷い。も、もしかしてこうなったのって、俺らの所為…?

「まさかそれで来るとは思わなかったなあ〜。……風紀委員長みたいに猫野郎のことでも訊きに来たわけ?」
「何? あいつがどうしたのか?」

 どうやら知らなかったみたいだ。目を見開いて俺を見る。……あれ、なんか、思ってた反応と違うな? 会長って確か、もっとあの猫野郎に対して敵意があったような。

「…知らなかったならなんでここに?」
「テメェが仕事サボってっからだろ」

 ああ、それで俺を捕まえに来たわけね…。うへえ、と顔を顰めると、会長は先を促すように、で? と訊いてきた。

「え?」
「だから、あいつがどうしたんだよ…。まさか、何か問題起こしたのか?」
「ああ、…うん、まあ、俺がここにいるのあいつの所為っていうかぁ、一緒にいた恐ろしいやつの所為っていうかぁ…」
「……そいつ、帽子被ってなかったか」
「うん、被ってたよ」

 会長は深い溜息を吐いて頭を抱えた。え、何、知り合いなのー?

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