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「…さっき、耳に触ろうとしていたな」
風紀委員長の言葉に頷く。
「猫耳でしょ? それがどうしたの」
「触ったか」
「…見てたでしょ、触る直前で邪魔が入って、その後から記憶無いんだよ」
何でそんなことを訊くんだろう。
「一応だ」
ふんと笑った風紀委員長はすぐに真剣な顔になって、顎に手を遣る。
「お前は気付かなかったか? あの時、間違い無くあいつは焦っていた」
「…はぁ? だから何だよ」
あの飄々とした忌々しいやつが焦っている姿は確かに見てみたいけど、それだけだ。
風紀委員長はチッと舌打ちすると呆れ顔になった。
「何も思わないのか」
「別にー? …あのさぁ、結局何が言いたいわけぇ?」
「俺はあの反応を見て、もしかしてあの耳は本物じゃないのか、と思った」
「……は、…?」
は? なに? 風紀委員長どうしちゃったわけ? そんなん有り得ないっしょ。
「あんなのただのコスプレでしょぉ? 本物なわけないじゃん」
「そうか」
どうでもよさげに呟くと、風紀委員長は俺に背を向けた。
「は? ちょっと、訊きたいことってそれだけー?」
「ああ、後はこっちで調べるから良い」
耳のことだけかよ! そんなの別に俺じゃなくてもいいじゃん。なんでわざわざ…。
俺は保健室のドアに手をかけたそいつの
背中に声をかけた。
「…もし、本物だったらどうすんの?」
「さあな。…まあ悪いようにはしないさ。俺は猫好きなんでね」
風紀委員長はそのまま出て行った。俺ははあと溜息を吐いて、目を瞑る。
…あぁ、カズマに会いたいなぁ。
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