▼ 保健室での会話(苦虫を噛み潰したよう)
(side:煕)
重たい瞼を開けると、ぱっと白い天井が目に入った。そして消毒の臭い。あ、ここ保健室だなとすぐに分かった。
「起きたか」
声がした方を見ると、風紀委員長がいた。俺たち生徒会と風紀は昔から対立していて、仲が良くない。だから俺が顔を顰めてしまっても仕方ないことだ。
ここに風紀委員長がいることも謎だけど、もっと分からないのが、どうして俺はここで寝ていたのかということだ。
「あ、起きたの。どう、体の痛みは」
「痛み? いっ! ったたたたた…」
「…痛むみたいだね」
保険医が苦笑する。起き上がった時にずきずきと痛みを訴え始めた体。俺はそのことで、さっき起きたことを思い出した。さあっと顔から血が引いていく。あの男は、やばい。人を傷つけることに一切躊躇がないんだろう。あの時見たイカレたような、冷めた目つきで愉しそうに嘲笑う男の顔が、瞼の裏に焼き付いている。ずきずきと痛む手を見てみると、手首が変色していた。俺が、あの猫野郎に触ろうとしたのが、いけなかったのか…? 怒ってた、よな、あの時…。
「あっ、カズマは!?」
カズマが危険な目に遭ってたらどうしよう!
「…あぁ、別に大丈夫みたいだぞ」
「みたいだぞ…って、そうだ、なんでお前がいるのさ? あそこにいたよねー?」
「お前がぶっ飛ばされた挙げ句に気絶したからだろ」
風紀委員長はギロリと俺を睨む。カズマはどうしてかこの風紀委員長も気に入ってて、今日遊ぼって誘ったのは俺と副会長なのに、こいつとかあの猫野郎とか余計な奴誘っちゃってさ…。あーあ、最悪。
「俺のこととか放っておけばいいじゃん」
「そうしたかったのは山々だが、ちょっとばかし訊きたいことがあってな」
「訊きたいことぉ?」
なにそれ?
俺は眉を顰めて不快感を表す。風紀委員長はとても嫌そうに舌打ちして、腕を組んだ。
「あいつらのことだよ」
「あいつら…猫野郎とあの帽子被ったやつ?」
「そうだ」
「なんで俺」
「本人に訊いても時間の無駄だと思ったからだ」
「言っとくけど、俺何にも知らないからね」
分かってると言うように、風紀委員長は頷いた。
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