保健室での会話(苦虫を噛み潰したよう)

(side:煕)

 重たい瞼を開けると、ぱっと白い天井が目に入った。そして消毒の臭い。あ、ここ保健室だなとすぐに分かった。


「起きたか」

 声がした方を見ると、風紀委員長がいた。俺たち生徒会と風紀は昔から対立していて、仲が良くない。だから俺が顔を顰めてしまっても仕方ないことだ。
 ここに風紀委員長がいることも謎だけど、もっと分からないのが、どうして俺はここで寝ていたのかということだ。

「あ、起きたの。どう、体の痛みは」
「痛み? いっ! ったたたたた…」
「…痛むみたいだね」

 保険医が苦笑する。起き上がった時にずきずきと痛みを訴え始めた体。俺はそのことで、さっき起きたことを思い出した。さあっと顔から血が引いていく。あの男は、やばい。人を傷つけることに一切躊躇がないんだろう。あの時見たイカレたような、冷めた目つきで愉しそうに嘲笑う男の顔が、瞼の裏に焼き付いている。ずきずきと痛む手を見てみると、手首が変色していた。俺が、あの猫野郎に触ろうとしたのが、いけなかったのか…? 怒ってた、よな、あの時…。

「あっ、カズマは!?」

 カズマが危険な目に遭ってたらどうしよう!

「…あぁ、別に大丈夫みたいだぞ」
「みたいだぞ…って、そうだ、なんでお前がいるのさ? あそこにいたよねー?」
「お前がぶっ飛ばされた挙げ句に気絶したからだろ」

 風紀委員長はギロリと俺を睨む。カズマはどうしてかこの風紀委員長も気に入ってて、今日遊ぼって誘ったのは俺と副会長なのに、こいつとかあの猫野郎とか余計な奴誘っちゃってさ…。あーあ、最悪。

「俺のこととか放っておけばいいじゃん」
「そうしたかったのは山々だが、ちょっとばかし訊きたいことがあってな」
「訊きたいことぉ?」

 なにそれ?
 俺は眉を顰めて不快感を表す。風紀委員長はとても嫌そうに舌打ちして、腕を組んだ。

「あいつらのことだよ」
「あいつら…猫野郎とあの帽子被ったやつ?」
「そうだ」
「なんで俺」
「本人に訊いても時間の無駄だと思ったからだ」
「言っとくけど、俺何にも知らないからね」

 分かってると言うように、風紀委員長は頷いた。

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