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 イカレ帽子屋はカズマを見下ろし、きし、と笑う。気味の悪い笑い方に、カズマの顔が強ばったように見えた。

「いいかァ、クソガキ。テメェみてぇな奴が俺はブチ殺したいくれぇ嫌いなんだよ。視界からさっさと消えてシネ」
「キミが嫌いなのは自分以外の奴全てでしょ」

 イカレ帽子屋はふんと笑った。そして長い指で僕を指差す。

「当たり前だろォ? 安心しろよ、テメェは俺のモンだからちゃんと好きだぜ」
「……ああ、そう」

 別に嬉しくないけど。そんなこと言っても、その気になれば帽子屋は僕のことだって殺してしまうだろうね。まあ、そんなことしたら女王と…ワンダーランドの掟が黙っちゃいないけど。

「ところで帽子屋、どうしてここに来たの?」
「ア? テメェがベタベタ触られてるからだろーが」
「ふーん? なんで分かったの?」

 触られてるってことと、ここの場所。
 イカレ帽子屋は僕の問いには答えず、キシシシと笑う。
 というか、カズマ。キミ、早く移動した方がいいんだけどなぁ。他の人もカズマを好きならもっと庇ってあげればいいのにね? 僕はにやりと笑う。まあ、その程度ってわけだ。
 茶髪の男も放置されたまま…と思ったら、あれ、いない? 誰か運んじゃったのかな?

「カズマ」

 固まってるカズマに視線を移し、声をかけると大袈裟には肩を震わせた。そして帽子屋から一歩、また一歩、後退り。頭の悪いカズマでも、イカレ帽子屋がどれだけイカレてるか、ちゃんと分かったみたいだ。副会長さんは、漸くカズマに駆け寄ってぎゅっと抱き締める。漸く…っていうか、今更、って感じだけど。

「帽子屋、もう部屋に戻ろうか」
「アァ? もういいのかよ」
「うん」

 飽きちゃった。そう言うと、愉快そうにイカレ野郎が口を歪めた。

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