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「おい、何やってんだよ」

 りゅーいちくんが強張った顔でカズマたちを見る。カズマはりゅーいちくんの方に顔を向けた。

「チェシャに耳触らせてもらうんだ!」

 ……いや、触っていいって言ってないんだけど。嬉々として言うカズマに、りゅーいちくんは右眉をくいと上げる。

「嫌がってるみてーだけど」

 あ。
 …気付いてくれたんだ。
 嬉しくなってりゅーいちくんに笑いかけると、ぶわっと顔が赤くなった。面白いなぁ。

「嫌がるわけないだろ! 俺が触ってやるって言ってんのに!」

 …うーん? カズマの自信はいったいどこから出てくるんだろう?
 あ、こういうところイカレ帽子屋に似てるな。

「カズマ、放して?」
「なっ」

 ゆるりと首を傾げて言えば、カズマの口が歪んだ。あちゃあ、怒ってるかな、これは? まあ怒ってると言っても全然怖くないし、もっと怖い人知ってるからね。別になんとも思わないけど、ちょっと厄介、かな? 

「なんでそんなこと言うんだよ! 親友の頼みだろ!?」

 僕はふうと溜息のような息を吐く。

「……カズマ、僕言ったよね? 親友は別にいるって」
「ならそいつも親友でいいから俺は大親友にしろよ!」
「はあ?」

 声を上げたのはりゅーいちくんだ。隣にいるレンは歪な笑みでこっちを見ている。それはカズマを嘲笑っているようにも見えるし、この前の忠告を聞かずにこうなっている僕わ嘲笑っているようにも見える。……もしかしたら、どっちも、かな。やれやれと思いながらレンを見ていて──気配を感じ、そっちを向く。茶髪の男が僕の耳を掴もうとしていた。気づいても、避けきれない──あ、駄目だなこれ。そう思ったときだった。
 あいつが、…悪魔が現れたのは。

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