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 帽子屋が僕のところで寝るということを告げて。僕はりゅーいちくんに外に連れて行かれた。帽子屋はりゅーいちくんを何を考えてるのか分からない顔でじっと睨みながら僕たちを見送った。帽子屋がモトヤに何をするか、よりモトヤがつっかからないかが心配だな。まあ大丈夫だと思うけど。イカレ帽子屋はバカじゃない。流石にここでは大人しくしているんじゃないかな。
 壁に背をつけて、僕は首を傾げた。

「それで。何かな?」
「何かな、じゃねえよ。あいつ――知り合いなのか」
「うん、知り合い……ってほど軽い関係じゃないんだけどね」
「…なんだそれ」
「僕がいる限りイカレ帽子屋もいるし、その逆も然りだよ」

 りゅーいちくんは目を見開いて、ぐしゃりと顔を歪める。それがヤマネに似ていて、ふふ、と笑みが零れる。

「な、なに笑ってんだよ!」
「いや、別に?」

 ほんとりゅーいちくんってヤマネに似てるなあ。だからイカレ帽子屋も、りゅーいちくんのことずっと睨んでいたのかな? 帽子屋は自称僕の「ご主人様」だから他に懐いている奴がいるのが気に食わないみたい。

「いつまでいるかわかんないけど、りゅーいちくんには迷惑かけないから、いいでしょ?」

 そう言うと、りゅーいちくんは何か言おうとして、口をもごもごとした。 僕はじっと待っていたけど、結局何も言わず、舌打ちだけで終わった

「じゃ、戻ろうか」
「ま、待て! あ、…あのな、さっき言おうとしたことだけどよ」
「ん?」

 ……さっき? 何かあったっけ?
 りゅーいちくんと話していた時のことを思い出していると、顔を赤くしたりゅういちくんが口を開き――。

「あっ! チェシャ! ここにいたのかよ!」
「……またかよ」

 がっくりと肩を落とすりゅーいちくん。遠くから、カズマが走ってくるのを見ながら、口角を上げた。うんうん、そっか、デジャヴだね。

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