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 僕の顔を見て諦めた表情をすると前触れもなく顔を近づけてきた。咄嗟のことに息を呑んで体が必然と後ろに少し傾く。間近にある端正な顔にチリチリと不快な感情が沸いてきたが先程まではないのいうのは、さっきのは相手がカズマだったからだろう。
 僕のムッとした表情を見て満足した様子(何て腹立たしいんだ)のYは顔を離して話を続けた。

「取り敢えずさ、俺はちょちょいっと記憶を操作して――あァ、これは普通は禁忌(タブー)だから勘違いするなよ。緊急事態だけこんな風に操作すんだ。俺の存在は認識させられるけど、残念ながらお前はできないことになってんだヨナァ。あー、でだな、一応お前も俺も学園の生徒ってことになってるから。お前は俺と常に行動を共にするように!」
「うーん、まあ、取り敢えず一緒にいればいいってことでしょ。僕はいいけど、キミは構わないの?」
「おう。あのモジャ毛のような奴だったらちょっと考えるとこだけどな」

 流れるようにスラスラと喋り終えたYは一度息を吐くとニッと笑った。






「ナニこれ」
「これは数学ってやつな。で、これが国語」

 Yは不思議な文字の羅列(僕の知っている字とは異なっていた)が書いてある本を沢山持ってきた。どうやらべんきょーってやつをするらしい。何だか本当に僕のいたところと違うみたいだ。もしかしたらさっきのは本当なのかもしれない。
 先程説明を受けたのは、学園は知識を得る為にその場所に行って勉強(知識を得るのに必要不可欠らしい)するものだということや、寮っていう集団生活をする建物に住むことになるとかね。一応僕の知っている言語で色々書かれた本を見て常識を身に付けろとのことだ。……これって、一見僕が常識ないと思われる発言だよね。

「まァ、さっきも言ったけど、俺と行動をするんだゾ。出来るだけ一人になるなヨ」
「僕は嘘吐かないよ」
「嘘吐け」

 「バレた?」笑うと、Yは諦めたように肩を竦めた。

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