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「あの、俺親衛隊じゃありません」

 とりあえず親衛隊ではないと訴えてみる。

「あ? お前親衛隊じゃねえの? でも圭に制裁したんだろ。お前俺のこと相当好きなんじゃねえか。親衛隊入れよ。そしたら制裁のこと許してやっから」

 ふんと鼻で笑いながら近づいてくる会長。言っている意味が良く分からなくて俺は呆然としながら会長を見上げた。すると何故か頬を染めた会長は俺の肩を掴む。

「な、入るだろ?」
「いや…あの、入りませんし、俺、制裁してません」
「ああ? そんな嘘吐いてんじゃねえよ。分かってる、お前の気持ちは。俺のことすげー好きだもんな?」

 全然分かってないよこの人! 誰か助けて!
 ニヤニヤとした顔の会長と未だ状況に付いて行けない俺。まだ掃除途中の教室。俺は箒をぎゅっと握りしめながら怖々と会長を見つめる。何で俺会長のこと好きだと思われてるんだ? そして何で嬉しそうなんだ?
 好きじゃない、制裁してない。どれだけ否定しても話が進まなそうだったので、否定することを諦めて、俺は疑問を口にした。

「あの…会長は圭くんが好きなんですよね。好きな人に制裁した俺に腹立たないんですか?」

 これでいきなり殴って来たり、風紀に連れて行かれたらどうしようと不安だったが、会長は相変わらず笑みを浮かべていた。

「腹立つわけねーだろ。つか、俺あんな不細工好きじゃねえよ。あいつに近づいたのは嫉妬して欲しかったからだ」
「はあ……え?」

 圭とやらは不細工なの? 会長圭のこと好きじゃないの? 嫉妬してほしいって構ってちゃんなの? 

「大成功だったな。…さっきは親衛隊入れっつったけど、やっぱ入らなくてもいいわ」

 ほっと息を吐く。良かった。親衛隊なんて入りたくないからな。何が悲しくて男にキャーキャーする集団の仲間にならないといけないんだ。

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