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話すのにも慣れてきた時、ふとアサが呟いた。
「翔と亜由は似てんの?」
「え、うーん…。うん、似てると思う、けど」
っていうか俺だし。頷くと、ニヤリとアサの口角が上がる。
「そーか、そーか。そりゃ良かった」
「え? どういう…」
「ああ、気持ち分かるわ。それに、性格だってモロ亜由じゃん」
「だよな、ずっげえ似てんのな」
びくりと震えた。アサは眉を顰めて訝しげに俺を見た。誤魔化すように笑う。
今気づいたように腕時計を見て、さっと席を立つ。
「ご、ごめん! 俺帰らないと!」
「え? マジ?」
「うん、亜由の様子も気になるし」
「あ〜、じゃあメアド交換しようぜ」
「え?」
な、何で……? 首を傾げると、アサはいい笑顔で携帯を取り出す。
「これっきりは寂しいだろ?」
結局、俺は三人とメアドを交換して、逃げるようにその場を去った。サブアドで亜由のも入っている携帯だが、別に大丈夫だろうと思っていた。
「はよー」
「お、翔おはよー! 何か顔暗いな、どうした?」
「…や、大丈夫。ちょっと色々あってな」
「ふーん? まあ、何かあったら相談しろよ」
「おー」
俺は吐き出すように言いながら机に突っ伏す。学が少し心配そうな目で見ているのを感じた。
昨日は酷く疲れた。胃がキリキリと痛んで仕方ない。そして溢れ出す罪悪感。俺はふあ、と欠伸を一つ漏らして目を閉じた。
俺はポケットに手を突っ込み、直ぐに顔を顰めた。
「げ、携帯がない。多分実験室だ」
「実験室ってもうすげえ時間経ってんじゃん。誰か届けてくれてんじゃね?」
「まーその可能性もあるけど。取り敢えず見てくるわ」
「おう、先に飯食っとくから」
「了解」
ひらひらと学が手を振る。俺も手を上げて教室を出た。早足で廊下を歩く。実験室は別棟だから、早くしないと昼を食べ損なう可能性があった。
数分で付くと、少しだけ乱れた息を整えながらドアを開く。俺は、目を見開いた。
「……どういうことだよ、こりゃあ?」
どうしてここに、とか。何で携帯を、とかいう疑問も浮かばない程、俺の頭は真っ白になる。
――アサが、人を殺しそうな顔で携帯を持っていた。
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