遭遇者

 部屋を出た俺たちは、コンビニエンスストアに行くためエレベーターに向かった。俺と御手洗が一緒にいるのが見慣れないのか、視線が集まる。敵意を含んだ視線もあり、俺はこっそり溜息を吐く。

「…大丈夫か?」
「ああ」

 御手洗が気遣わしげに俺を見た。俺は笑みを浮かべ、頷く。

「そうか…」

 御手洗は苦笑して前を向いた。俺は無言で隣を歩いた。ボタンを押して数秒、音が鳴ると共にエレベーターが開いた。それに乗って、一階を押す。エレベーターが動く音がするだけの静かな空間。俺は気になっていたことを口にした。

「……どうして俺だったんだ?」
「ん?」
「一でも良かっただろ」
「それは…」

 御手洗はぼんやりと上を見上げ、俺を見る。何を考えているのか分からない顔で、ぽつりと呟いた。

「……さあな。特に意味はねえよ」
「本当に?」
「ああ」

 そうは見えないんだけど。訊かれたくないことなのか? 俺は少しモヤモヤとした思いを残してそうかと頷いた。すると御手洗はほっとしたように息を吐いた。






 コンビニには生徒が数人いた。俺たちを見てぎょっとした顔をして顔を逸らす。中には怯えたようにちらちらとこっちを見る生徒もいた。その中堂々とカップ麺のコーナーへ向かう御手洗に続く。御手洗はカップ麺を一通り眺め、あ、と声を発した。俺は、どうしたのかと横目で御手洗を見る。

「そういや、あいつら何がいいんだ?」

 ああ、確かに。

「訊いとけば良かったな」

 俺たちはカップ麺を手に取り、首を傾げる。
 「ま、なんでもいいだろ」早々に考えるのを止めた御手洗がカップ麺をぽいぽいカゴに入れる。連絡して訊いてみようかと考えていたが、もういいかと黙ってそれを見ていた。好きなカップ麺ではないかもしれないが、嫌いなカップ麺があれば交換すればいいだけの話だ。

「あ…」

 聞き覚えのある声がした。俺は顔を上げ、その声の主を見る。御手洗が横で眉を顰めた。しゃがんでいた俺は立ち上がり、どうも、と小さく呟いた。

「杷木…」
「おい、杷木に近づくな」

 御手洗がそいつ――せんせーから庇うように俺の前に立った。せんせーは一瞬だけ御手洗を睨み、俺を見る。……? 何だろう。何だか、違和感がある。その違和感の正体が分からず、俺は眉を顰めた。
[ prev / next ]

しおりを挟む

17/17
[back]