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「よし、飯食おう」
空腹に耐えられなくなった御手洗が言った。そこで俺は腹が減っていたことを思い出す。ちらりと一を見れば、同じような顔をしていた。
「千尋は部屋帰ってから食べるのー?」
「飯の後でまたゲームやんならここで食べてけよ」
「でもそろそろコウちゃん帰ってくるんじゃ…」
あ、そういえば御手洗の同室者って王道桜木じゃん。あいつ何してんの? 掛け時計を見ると、八時を回っていた。確かにそろそろ帰ってきてもいい時間だ。鉢合わせてしまうなら、一刻も早く帰りたい。
「あいつなら今日帰ってこねえぞ」
「そうなのか?」
「ああ」
御手洗の言葉にほっと息を吐く。どこで何をしているのか知らないが、興味がないので訊かなくていいや。俺のあからさまに良かったという顔に、了が苦笑する。
「じゃあ、お言葉に甘えて。お前が作るの?」
「んーまあ、簡単のでいいなら……やっぱりカップ麺でいいか?」
冷蔵庫を開けた御手洗が振り向いて言った。その顔は引き攣っている。……材料がなかったのか?
「あいつ、材料無駄に使いやがったな…」
忌々しげに呟いた御手洗に察した。……王道桜木が関係しているようだな。憐れみの視線を向けると御手洗は大きな溜息を吐いた。
「俺は食べられればなんでもいい」
「俺もー」
「同じく。カップ麺好きやし」
「サンキュ」俺たちの言葉に笑った御手洗だったが、あ、と呟く。…なんだ、今度は。
「…カップ麺、足りねえわ」
おいおい。俺たちはきっと今、同じことを思った。数を確認してから言えよ。
「今から買ってくるわ、杷木、一緒に来ねえ?」
「はー? 沢山買うわけでもないのになんで千尋連れてくの。ていうかカップ麺買いに行くなら普通に食材買ってくれば?」
刺々しい言い方だが、言っていることは尤もだ。まあ、カップ麺の方が楽でいいけどな。カップ麺だけなら俺は必要ないだろ。ていうか何で俺。連れていくにしても俺じゃなくて一の方がいいじゃないのか。
「別にいいだろ。つーか俺は杷木に言ってんだよ。お前が口を挟むな」
御手洗はちらりと俺を見る。……もしかしたら、何か話があるのかもしれない。俺は頷いた。
「分かった。付いてく」
「えっ千尋!?」
「ちょっと体動かしたいし。すぐ戻ってくるから」
了の頭をぽんぽんと叩くと、少し不満そうだったが、分かったと言って立ち上がった俺を見上げた。
俺たちは了たちに見送られて部屋を後にした。
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