立ち直り


(side:泰)





 屋上のドアを開けると、カツン、という音が聞こえた。首を傾げて階段の下を見るが、結構な段数がある所為で先が見えない。

「どうしたのー?」
「いや…」

 じっと見ても矢張りなにも見えず、俺は首を振ってなんでもないと告げた。…気のせいか。

「泰くん、これからどうする? 帰る?」
「そうだな…あ、いや、ちょっと待って」
「ん?」
「俺、……せんせーに謝んないと」
「せんせー…もしかして守山せんせー?」
「ああ」

 俺が取り乱した時、酷く動揺していた。後悔している人に向かって、酷い言葉を投げかけた気もする。俺が体験したわけでもないのに、まるで自分がイジメを受けていたような――そんな発言をしてしまった、ような。
 自己嫌悪に陥って溜息を吐く。そしてハッとあることを思い出す。

「そうだ、御手洗!」
「え? 御手洗?」

 了は眉を顰めて名を口にした。

「今日、ゲームするって約束した」

 が、すっかり忘れていた。せんせーの用事が終わったらメールするって言って、それから。慌てて携帯を取り出して、時間を確認し、青褪める。あれから既に二時間が経過していた。

「そーなんだ。ま、いいじゃん? 御手洗のことなんてさあ」

 ニコニコと笑みを浮かべながら酷いことを言う了に苦笑した。そういえば、御手洗と仲が悪かったな。

「そういうわけにもいかねーよ。今からでも連絡するか…ん?」

 もう一度携帯を開いて、新着メールと不在着信の量にぎょっとする。さっきは時間だけ見て気づかなかったけど、こんなに連絡があったとは…。全部御手洗か? 悪いことしたな…。
 ところが、メールや着信は、御手洗だけじゃなかった。了や見知らぬ番号もある。見知らぬ番号も気になるところだが、もっと気になったのは、小笠原さんの名前があるということだ。俺、小笠原さんに教えた記憶ないんだけど…。まさか、あの人勝手に…?
 やりかねない、あの人なら。思いながら頬を引き攣らせる。

「でも御手洗が守山せんせーと言い合ってたとか会長が言ってたような…?」

 了が顎に手を当てて少し首を傾げる。もしかして、御手洗も俺のことを探してくれていたのだろうか。
 胸が温かくなり、同時に目も熱くなった。皆、会ってそんなに経ってないのに、良いやつだよなぁ。……ところで、さっきも思ったけど、何で会長?
[ prev / next ]

しおりを挟む

11/17
[back]