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 エレベータから降りると、いつもよりも廊下が騒がしかった。

「おい、この騒ぎは何だ」
「えっ、あ、か、会長様!」

 近くにいた奴の肩を掴み声を掛けると、どこかの親衛隊に入っていたような顔のそいつは俺を見て顔を赤くする。俺はそれを気にしないようにしながらもう一度訊ねた。「何があったんだ」

「あ、え、えっと…」

 言いにくそうに顔を逸らしてしまい、舌打ちをする。一体何があるんだっていうんだ。すると隣の奴がそいつの代わりに口を開いた。

「守山先生と御手洗様が…」

 守山と御手洗? 確かに仲のいい二人ではないが……。俺は溜息を吐いて野次馬を掻き分けた。俺に気付いた生徒たちが驚きの声を上げる。

「おい、テメェら! 会長命令だ、すぐにここから立ち去れ!」

 この言葉に顔を見合わせ、早足でこの場を去り始めた。それを見送って漸く騒ぎの中心へと歩を進める。

「だから俺は何もしてないんだよ!」
「だったら何であんな顔してたんだよ!」
「おい」

 睨み合っている二人に取り敢えず声を掛けたが、こっちに全く気付かない。……この俺を無視するたぁいい度胸だ。顔を引き攣らせてもう一度声をかけるが、結果は同じ。思わず二人の頭を殴ってしまった。

「い゛っ!」
「っで!?」

 そこで怒りの矛先を俺へと変えたこいつらは目を吊り上げて俺を睨んでいる。俺は深い溜息を吐いて二人を見た。

「テメェらな…こんなところで騒ぐんじゃねえよ。場所を考えろ場所を」
「……ッチ」

 御手洗が舌打ちをし、携帯を開いた。しかし直ぐに苛立ったように携帯を閉じる。眉を顰めてそれを見ていると、御手洗が再び守山を睨んだ。

「…連絡はあったのか」
「……ねぇよ」

 さっき携帯を見たのは連絡がないかを確認していたのか。話についていけない俺は顔を顰めた。

「何があったんだよ」
「杷木が――」
「は、杷木!?」

 いきなり杷木の名前が出てきて、変な声がでてしまった。一つ咳払いをして話を促す。

「は、杷木がどうしたんだ」
「このホストに聞け」

 吐き捨てるように言われ、俺は守山に視線を向けた。

「……杷木が、急に自分の首を絞めたんだよ」
「はあ!?」

 何でそんなことになったんだよ!?
 脳裏にあいつの笑顔が浮かび、俺は尚更訳が分からなくなった。
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