03


 確かに沖田さんの手品は目を張る物だった。一体どこでそんな技術身につけたんだと少し気になるが、ちらりと見たときの沖田さんの姿が女として負けた気がして止めた。別に嫉妬とかじゃないから、うん。

「じゃあ僕はそろそろ行こうかな」
「えー、もう?」
「もっとやってよ!」
「また今度ね」

 子供と話すときの沖田さんは凄く優しそうな顔をしている。
「で、お金は? 一人五百円だよ」

 前言撤回。

「流石に子供からお金を取るのは如何なものかと…」
「え?」
「何でもないです」
「はいこれ!」
「楽しかった!」

 って、渡すんかい! 誰のお金だよそれ。親の金だろ! もっと大切に遣いなさい! とは恐ろしくて(誰がって勿論沖田さんだ)言えなかった。まあ本人たちがいいならいいよね!

「じゃあまたね、采架ちゃん」

 去っていくスカート姿の沖田さんをそのまま見送る。すると、ポケットから紙が一枚落ちた。何だろうと紙を拾って顔を上げると沖田さんの姿はなかった。次いで紙をみる。そこには一句かかれていた。

「梅の花 一輪咲いても 梅は梅」

 ……どういうことなの。









 それにしても今日は変なことばっかりだった。これはあれか、クリスマスイリュージョンってやつか。クリスマス怖い。
 ていうか大変疲れた。早く寝よう。溜息を吐きながら家のドアを開ける。靴が沢山、ということは皆帰ってるのか。靴を脱ぎ、リビングへ向かう。
 リビングのドアを開けた瞬間、ぱん、と勢いよく何かが弾けた。

「めりーくりすます!」
「めりくりー!」
「目理栗済ます」

 あれ一人違う人いるぞ。
 っていうか何だこれ。何で私はクラッカーの中の奴(なんていうんだっけ、あれ)まみれなの。目を瞬かせてダイニングテーブルを見るとそれは豪勢な料理が並んでいた。ケーキもある。

「今日はくりすますってやつなんだってね」
「これは一体…」
「俺たちお前に世話になってばっかりだからな、こんだけじゃまだ返せきれねえが、礼をさせてくれ」

 左之さんの言葉に感動しそうになったが、それは左之さんのサンタ姿(髭も付いてるよ)で台無しだ。何で髭つけたよ。

「この豪華な料理は…」
「俺が作った」
「やっぱり。流石斎藤さんですね…」
「俺はだな」
「俺と永倉は飾り付けをした」

 新八さんの言葉を遮って、土方さんが腕を組みながら言う。遮られた新八さんは不服そうに眉を顰めたけど、鬼の副長に文句は言えないのか押し黙った。

「俺と左之さん、あと総司はばいとやって金貯めてさ、それでぷれぜんと買ったんだ。 采架と目が合ったときはヒヤヒヤしたぜ」
「…うん」

 うきーとか言ってたもんね。

「まあ取り敢えずよ、座らねえか?」

 左之さんの言葉に一同頷いて、定位置と化した場所に座る。私は少し嬉しくなって表情を崩すとグラスを持った。

「メリークリスマス!」








fin.

こんなのにするつもりはなかったんです……!
新八他の扱いが酷すぎて自分でも同情してしまいました。
ギャグではない…と思います、うん。

皆様メリークリスマス!

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