02


 折角のクリスマスだからという訳ではないが、暇だったので外に出た。雪が降っていて何となくロマンチックだが、恋人らしき者が影すらない私にとってはどうでもいいことだ。久和はどうしているだろう。まああいつは顔だけはいいからどこかで誰かとイチャイチャラブラブしているかもしれない。うえ、気持ち悪いなそれ。想像したらキモイ、果てしなくキモイ。どれくらいキモいのかというと、そうだな、左之さんがサンタ姿(髭も付いてるよ)で笑顔振りまいてるくらいキモイな。
 うんうんと納得しながら何だかきゃあきゃあと騒がしい街の一角に目を遣って、直ぐに逸らした。

「……、」
「これなんてどうだ? 一つ三百円だぜ」
「きゃーっ、かっこいい! あの、握手してください」
「おう」
「ずるい、私も!」

 私は何も見ていない何も見ていないナニモミテイナイ。左之さんがサンタ姿(髭も付いてるよ)で女性を魅了しながらケーキを売ってるのなんて全然見てない。ああ、一つだけ訂正しておこう。サンタ姿は別にキモくなかった。いや、見てないけどね!
 さてどうしようかと通りを歩いていると歓声が響いた。今度は何だと横を見る。近くにいた人によると、どうやら誰かが綱渡りをしているようだ。観衆を押しのけて輪の中心を覗く。

「おー、すげえ!」
「猿みたいだ」
「誰が猿だ! 俺は藤堂へいす……っ!」

 得意げに綱渡りをしていた平助に激似している誰かは観衆の一人の言葉に反応して顔を上げると固まった。そしてバランスを崩し、倒れかかったところで何とか場を繋いだ。

「う、う、うきー!」

 よし私は何も見なかった。去ろう。








 平助に激似していた人のパフォーマンスを最後まで見ずに背を向けて再び歩き始めた。

「わあっ、凄い!」
「もっかいやって!」
「はいはい」

 ここでは手品をやっているみたいだ。子ども達が嬉しそうに声を上げている。私は手品が結構好きだ。見ていこう。……やっぱやめよう。

「やあ采架ちゃん」
「ぎゃあ!」

 少し顔を青くさせて方向転換させようとするも、それは簡単に邪魔された。結構距離があった筈なのにまさか瞬間移動したのか、こいつ。
 目の前に現れた沖田さんを睨むように見た。どうみても女性の格好をしている。沖田さんは女装癖があったらしい。何か嫌だなそれ…。

「采架ちゃんも見ていくよね」
「いえ私は」
「見ていくよね」
「あはは、私超暇だったんです。嬉しいなー」

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