いい精神科教えますよ


「あん? こりゃあ何だ?」
「お茶請けですよ。クッキーだけですが、どうぞ」
「くっきー? 初めて見たぜこんなの!」

 折り畳み式テーブルに置いてあったクッキーの袋を開け、どうぞと勧めながら私も一つ手に取った。自称新選組の永倉新八は我が物顔でカーペットの上に胡座をかくと、目を見開いてクッキーを凝視した。……うん、まあ法律とか警察知らない人がクッキーを知ってる訳ないよね。ポリポリと食べている私を一瞥すると、自称永倉新八は恐る恐る手を伸ばした。

「……!? うっめえ!」

 ……嗚呼、何だか今ちょっとこの人が哀れに見えてきた。ま、それは直ぐ消えたけど。
 がっついてクッキーを頬張る自称永倉新八を横目に、私はこれからどうしようと考えた。警察なのか? それとも精神科に行くべきか…? でも刀持ってるしなあ。警察かな、やっぱり。

「そういやこれは何だ?」

 おい、さっきから質問ばっかだなこいつ。って、もうちょっと綺麗に食べられないのか…。口の周りが食べかすで汚いぞ。
 まあいいかと自称永倉新八が指差すものを辿っていくと、携帯があった。これですか、と携帯を手に取るとそいつは大きく頷いた。

「携帯です」
「けいたい?」

 何かが可笑しい、と呟いて彼は顔を歪めた。そして。

「二千十年…!?」

 彼の視線は壁に掛かっているカレンダーに留まっていた。

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