代わりに猫型ロボットを寄越せ


 ああもしかしたら私は今年厄年なのかもしれない。否、断定して厄年だ。

「で?」
「いやあ、ちょいと押入に入ってみたらこっちに来てたっつうことなんだが……おいおい顔が鬼のようだぜ采架ちゃん」
「で?」
「あー、いや、わ、悪かったな」

 事件は朝方に起こった。学校の用意をしているとがたりと音がして、その音を辿ってみると案の定。クローゼットから新八さんこと永倉新八が出てきたと言うわけだ。どういうことなの…。家族も可笑しいがこの家も可笑しい。引っ越したい。

「もしかすっと、往き来できたりな」

 まさかなと豪快に笑っている新八さんを白い目で見ながら顎でクローゼットを指す。「新選組の永倉と在ろう者が若い娘に顎で使われるってか…」ブツブツと呟きながらクローゼットに入っていく姿は何だか哀愁を感じた。ちょっと笑ってしまう。
 いくら待っても出てこないのでもしかしたらクローゼットの居心地がいいとか抜かすんではないだろうかと少しヒヤヒヤしながら開けると、そこには新八さんはいなくて。あー、また帰ったんだなとか思いながらクローゼットを閉めようとした瞬間、にゅっと筋肉質の手が闇から伸びてきて私の手首を掴んだ。声にならない悲鳴を上げながら物体(仮)にパンチ一つ。それは悲鳴を上げた。

「おいおい、酷えぜ采架ちゃん!」
「しっ、新八さん」

 よく見たら新八さんだった。ほっと安堵の息を吐く。

「って往き来できんのかよ!」

 私の部屋のクローゼットは某猫型ロボットが出てくる国民的アニメの如くタイムマシンに変化したらしい。なんじゃそら! つかどうせなら猫型ロボットを寄越せよ!

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