神は彼に味方した


「へえ、新八さんって意外に頭いいんだ」
「……今意外にって聞こえたんだが」
「気のせい気のせい」
「まあそういうことにしとくぜ。っと、これでどうだ!」
「げっ」

 気がつけばa4にあったポーンは白のナイトに取られ、そして黒のキング、はe8(初期位置のまま)にある。これはもう負けは確定している。何たってキングの周りは他の駒の塊。八方塞がり四面楚歌。つまりは動けない。私は馬鹿か…。

「ま、参りました…」

 悔しさに顔を歪めながらリザインする。何でこんなに上手いの。私も始めて日は浅いけど、新八さんは今日初めて遣った筈。だから将棋ではなく難しいチェスにしたというのに……!
 新八さんは頭を少し下げた私に満足そうに頷いた。おい久和、誰が筋肉馬鹿だよ。この人頭いいし要領いいじゃねえかああああ。

「よっしゃ、もう一回やるか!」
「えええ。今度はトランプにしようよ!」
「とらんぷ?」
「ブラックジャックとかでいいかな」

 なんだそりゃあと目を輝かせてこっちを見る新八さんを無視して(実は私は負けず嫌いなんだ)引き出しからトランプを出した。














「よっしゃ、20だ!」

 世の中は何て不公平なんだ。

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