恥じらう乙女、その名は新八


「采架ちゃん! ありゃあ何だ!?」

 取り敢えず狭い(事実だけど複雑だ)部屋にいるのもなんだしとリビングに通したのは数分前だ。私の服装をみて新八さんは顔を赤らめた。「この時代の女ってのはそんなに肌を晒すのか!?」制服だから仕方ないと思うんだけど。っていうか今夏だし、暑いからね。私がそういうことを言えば更に顔を赤くして怒り出した。これじゃどこに目を遣ればいいかわからないと言うので(まるで恥じらう乙女のようだ。気持ち悪い)仕方なしに着替えたのがついさっきだ。着替えて、序でにお茶(緑茶か薄茶の方がいいかと思ったけど結局麦茶にした)を持ってきた。そして戻ってきた途端新八さんは勢い良く喋り出した。どうでもいいけどテレビに貼り付かないで頂きたい。

「それはテレビだよ」
「てれび?」
「えーと、例えば」

 紙とボールペンを手に取り、新八さんに近づく。興味津々とテレビを凝視していた彼はこっちに視線を遣って、再び首を傾かせた。
「それは?」
「紙とボールペン。ボールペンは筆の進化したやつ」

 あんたは何でも訊きたがる子供か!
 目の前に持って行くと、へえ、と感嘆の声を上げた。
 私はダイニングテーブルに新八を促し、自分も座ってから紙にペンを滑らせた。先ず数多の正方形、そして上に長方形を一つ描いた。

「この正方形の一つが私の家とする」

 トン、と正方形の一つをつついて目上に新八さんを伺った。ふんふんと真剣に聞いているのを確認して続けた。

「外を見れば分かるように、電線というものがあるんだけど、――あの細いものね。で、そこを情報が通ってくるんだよね。電気っていう源を利用して。その情報はある一定の場所から、私の家だけじゃなくて全部の家に届く。まあその情報は殺人の知らせだったり自然のことだったり様々なんだけど。今やってるのはドラマっていう、昔でいうと歌舞伎みたいなものかな。人が入ってるわけじゃないから安心してね」

 絵を利用して説明してみるけど、如何せん私は頭が悪い。説明なんて普段しないし(テレビの説明なら尚更だ。っていうかしたことない)、分かってくれただろうか。

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