まだ前日にもなっていないのに休日をはさむからだろうか。今日の教室は女子達のきゃいきゃいとした声が目立つ。チョコレート誰にあげるの?えー内緒だよお。前言ってたサッカー部の人なんでしょーという言葉の後にひときわ声が高くなった(相手は大方俺の親友だろうと推測する)。そんな色めいた会話を背に俺は、あーもうすぐバレンタインなんだなあなんて呑気に思い顎に手をあてた。微睡む思考の中でひとりの後輩を思い浮かべながら。


「松風は俺にチョコレートくれるよな」

部室にて、俺が唐突にそう言うと目の前の後輩は目をぱちくりとした。その後にうーん、なんて言いながら首を捻っている。

「俺と霧野先輩って恋人同士でしたっけ?」
「いや違うけど。くれるんだろ?」
「誰もあげるなんて言ってませんけど。俺男なんでその日は貰う側ですし」
「今や男とか女だとか関係ないんだぞ松風。あの神童だってお前に用意してる筈だし」

前に「て、天馬って甘い物平気だと思うか、」とあからさまな質問をされたからきっとそうなんだろう(まあ適当に流したけど、)。松風は顔をひきつらせながら小さく「とんでもないもの渡されそう…」と呟いた。聞かなきゃよかったって顔だ。金持ちなことが仇となるとは、うん残念だったな我が親友よ。

「けど性別が関係無くても俺と霧野先輩は恋人じゃないですし。かと言って義理でも先輩だけだとあれなので、部員皆に渡さなくちゃならないし面倒です」
「なら恋人になる?」
「……結構、です」

あ、今ちょっと考えた。まったく素直じゃないなあこの後輩は。というか面倒です、っておい。確かに人数が多いから大変だけど。

「俺松風からのチョコ欲しいなあ。」
「えー……あ、先輩もくれるっていうなら俺もあげますよ?」
「うっわ何それ。自分がチョコレート渡すとこなんて想像しただけで引くわ」
「…霧野先輩の場合まったく違和感な…いひゃいいひゃい!」

何だとこのやろう。誰が女子か。むかついて松風の頬を左右に俺的やんわりと引っ張ると涙目で訴えられた。お前が悪い。
「まあとにかく、手作りを楽しみにしてるんで」「…すごい理不尽だなあ」

松風は苦笑いしながら頬をさすっている。ふふん、けど満更でもないんだろ?



120210 リクになかったので此方へ
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