シュウと出逢ってからずっと気になっていたことがあった。まあそんな大したことじゃないんだけどね。

「ねえシュウ。シュウの私服って格好いいね。」
今日のシュウは私服姿だ。全体的に真っ黒なのがシュウにぴったりだと思う。服などに無頓着な俺でもそう思うんだから凄く似合ってるんだろう。俺の言葉にシュウは少し照れたように微笑んだ。
「そう?ありがとう。そういえば僕、天馬はユニフォーム姿しか見たことないや。」
シュウは自分の服の裾を指で触りながら言った。うんまあ、それはそうだろうなあ。俺がひとり納得していると、急にシュウが俺の腕を掴んだ。
それにびっくりしながらも、腕を掴むシュウの手を見てもう一つ気になってたことを思い出した。シュウって凄く陽に焼けてて良いなあと思ってたんだ。いっぱいサッカーしてたんだろうな。
しかし今はそんなことを考えてる場合じゃない。未だに腕は掴まれたままだ。

「どうしたの?」

意図が分からず訊くと、シュウは微かに口角を上げながらゆっくりと話し出した。

「あのさ天馬。僕、天馬の私服姿見たいな。」
「え?俺の?」
「そう。今度見せてよ。」
私服かあ。見せるのは勿論良いけど一つ問題がある。
「えっと、そんな格好じゃサッカーしにくいよ?」
思ったことを素直に伝えると、シュウはずるりと体を傾けた。え、俺変なこと言ったかな?シュウは今まで掴んでいた腕を離すと、頭に手を当てて深い溜め息をついた。そういえばその前髪も気になってたな。というか何でそんなに呆れてるんだろうシュウは。
「な、なに」
「あのねえ天馬。僕達は恋人同士だよ?そりゃあサッカーしてる事が多いけどさァ」
それ以外にもあるでしょ?ただ会って話したりするだけじゃ駄目なの?
そう言われてやっとシュウの言いたいことを理解する。理解したけど、でもそれ、で、デートまではいかないけど凄く恋人らしいというかあれ?こういうのって友達同士でもするっけ。
悶々と考えていると本日二回目の溜め息が落ちてきた。顔を上げてみるとシュウの少し傷ついたような表情に気づく。
「シュ、シュウ」
「分かった。もういい。天馬は僕と恋人らしい事がしたくないんだ。」

シュウはそう言うと背を向けて歩きだした。違うよシュウ。待ってよ行かないで、
「シュウ!俺、シュウと恋人らしい事したいよ!」

思わず叫んでいた。
立ち止まりゆっくりと振り返ったシュウは凄く嬉しそうな笑顔。もしかして俺、嵌められた?


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