「うわあ素晴らしいよ雪村。すごいすごい」
ぱちぱちとやる気のない拍手が俺の感情を刺激する。まあ刺激を与えているのは拍手だけじゃないけど。何故そこで褒めるのか理解出来ない。
「馬鹿にしてるんですか吹雪先輩。」「そんなとんでもない」
折り紙で鶴を折れるなんて凄いよ、なんて先輩は言うけど、こんなことで褒められても馬鹿にされているようにしか聞こえないから。と言うかそのわざとらしい否定は馬鹿にしているんだろう。ああそして何故俺が折り紙なんかを折っているのかと言うと、チームメイトの家族が入院したらしいので、そのひとに贈る千羽鶴をチーム皆で作らないかという話になったのだ。しかしそんな千羽も折れる時間が有るわけがない。ましてや折り紙なんて小学生以来なのだ。余計に時間が掛かるだろう。で、千羽鶴と呼ぶには五分の一にも満たないものを作ろうとして…あっそこのヤツだけ頭を折ってない。まあとにかくそんな理由でひたすら鶴を折っていると吹雪先輩が、俺が折ったばかりの鶴達を見てさっきの台詞。

「鶴なんて小学生でも折れますよ。」
「うんそうだね。けど22歳の僕は鶴を折れないよ」
出来たばかりの鶴がぽろりと手から落ちる。我ながら綺麗に出来たのに。イヤあんたは24歳だろ。こんな時に意味もないサバを読むな。つか微妙だし。そんなツッコミも口には出さず、先輩の言葉に少し驚いた。
「マジですか?え、鶴折れないんですか?」「うん」
先輩は先程俺の手からこぼれた鶴を拾い上げた。コレ一番良い出来だねなんて言いながら。ふふん、そうだろう…じゃなくて。
「昔に千羽鶴とか折りませんでした?」
「んー友達は折ってたよ。僕はそれを見てたけど。鶴を糸に通す役ね」
成る程。もしかして先輩は折るのが下手くそで友達も見かねたのかもしれない。細かい作業ってすぐ飽きそうだからなこの人。妙に俺が納得していると、急に先輩がそうだと何かを思いつく。少しばかり輝いたその瞳で変なことを思い付かなければ良いが。
そんな俺の祈りを知らない先輩は、手元にあった鮮やかな折り紙をヒラリとさせて笑顔で言う。

「折り方、教えてよ雪村」

うーん。少々めんどくさいと思いつつ、これを口実に先輩との距離(物理的な)が縮まることに気付いた俺は自然ににやける口元を隠しながら良いですよ、と答えた。

しかし先輩の折った鶴はもはや鶴と呼んでいいのか理解に苦しむ代物だった。とりあえず先輩には山折りと谷折りを区別してほしい。


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