※2011映画バレあり。

例えば僕にない、サッカーへの純粋なひた向きさとか。人一倍努力するところや、一生懸命に想いを伝えようとするところ。仲間達に向ける笑顔とかさ。天馬、君が愛しいよ。あとそんなに急いで走ったら危ないよ。僕は何処にも行かないから。
はぁはぁと息を乱して此方へ走る天馬は、僕の前まで来ると持っていたボールを目の前に突き出した。それが僕の赤と白の前髪に掠める。しかしそんなことも気に止めず、早くも息を整えた天馬は満面の笑みでボールを抱き抱えた。

「シュウ!俺達で新しい技を作らない!?絶対上手くいくと思うんだ。」
そう言ってボールを渡してくる天馬は、興奮しているのか頬に赤みが差している。そんな些細な変化も愛しいと感じる自分は完全にほだされているんだろう。先程まで考えていた事を一旦頭の隅にやり、得意の微笑みを被せた。
「そうだね天馬。やってみよっか!」「本当!?やったあ!」
了承の意を示すと、只でさえ花が咲いたような笑顔がもっと、もっとと言うように花弁が開いていった。ああこの瞬間が好きだと思う。僕は天馬のこの笑顔が好きなんだ。本当はね、天馬。此れからも僕は、この花を枯らさないための、水で在りたかった。僕は決して花には成れないけれど、花を生かす水に成りたい。君の支えになりたいと思っていた。
けど僕はいつまでも天馬の傍に居ることは出来ない。それはしょうがないことだけれど、やっぱり苦しいんだよ天馬。僕はずっと君と居たい。一緒にサッカーがしたい。笑い合って生きたいんだ。
ふとボールを蹴っていた足を止める。それに合わせて相手も歩みを止め、怪訝そうに頸を傾げた。だって、だって、
「天馬。僕、此れからもずっと、君と一緒にプレーしたいよ。」そう言う己の唇がふるふると震えるのが分かる。胸や咽が苦しい。
ああ、僕は怖いんだ。折角君と出逢えたのに離れてしまうのが嫌だ。じわりと何かが滲むのを感じた。
けれどそんな臆病者の想いも知らずに、君は言葉を紡ぐんだ。

「急にどうしたのシュウ?サッカーしたいなら何時でもしよう!俺、シュウとのサッカー大好きなんだ!」

そういうことじゃないんだよ天馬。それに僕はプレーだけじゃなくて、君のことが凄く好きだよ。君が愛しいんだ。僕ばかり狡いよね。狡いよ天馬。好きなんだ。きらきら輝く笑顔にそんなことが言えるわけがなくて、僕は花の唇に少し乱暴に噛み付いた。ごめんね。やっぱり僕、水には成れそうにないや。


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