ノクスとユーリ

彼を押し倒すとあからさまに不満げな顔をされた。え、ここまでしておあずけって。

「あの、ユーリさん」
「ちょっと待ってくれないか。何で私が下なんだ」
「え、いやそれは…その場の流れと云いますか」
「それなら尚おかしい。君が下だ」

ぐっ、と彼の顔の横についていた腕を掴まれる。わ、わ、これはまずい。

「っ、駄目です。どう考えても貴方が下だ」
「…王子様は戯言の趣味があるらしい。君の方が女役が似合うよ」

あーだこーだと防戦一方。しかし自分の方が有利だ、未だに彼を見下ろす形だから。

「……黙って」
「な、」

何を言い出すんだ、なんて台詞が続くだろう唇を塞ぐ。舌で押してやるとすんなり中に入れて拍子抜けした。

「っ!ん、」

こちらがリードしようと絡めた舌を逆に捕らえられ、しまったという言葉が脳裏に浮かぶ。ああ彼の方がキスは巧いということか。けれど初めてで舌を入れた自分はよくやったと思う。

「……まだまだ下手だね」

勝ち誇ったユーリさんの表情が悔しくて、僕は彼の真っ白な首筋に噛み付いた。


20120402/16:28


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