ノクスとユーリ

真っ白な雪景色に真っ白な王子が溶け込んでいた。

ぽろぽろと溢れる涙は、彼が今居る場所の雪をじわりじわりと融かしている。

「淋しいのか?」

王子様の目線に合わせてしゃがみ、問う。と言っても王子様は俯いたままで、瞳がかち合うことはない。

「……ねえ、さん」

やっと声を発したと思ったらそれは己の名ではなくて彼の肉親。王女様だ。

「私は君の姉ではない。さあ顔を上げて」

なるべく優しく言うと彼はゆっくりと顔を上に向けた。薄い蒼の瞳が揺らぎ、それに不覚にも美しいと思ってしまう。
それよりも王子様はまだ涙をお止めにならないらしい。まだまだ子供か、そう呆れかけていると不意に腕を掴まれる。

「キス、していいですか」
「……かまわない」

たった今まであんなに弱々しかった王子様に荒々しく唇を塞がれる。
彼の涙が頬に当たるのを感じながら、やっぱり自分は蒼よりも紅のほうが好きだなあ、なんてぼんやり考えていた。




20120402/00:10


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