切原赤也の初恋物語5




「知らねぇの?ジロ君、中学ん時、可愛い彼女いたぜ?」

「!!!!!」





死刑宣告のような丸井からの一言が胸に刺さる。




(ま、それはそうでしょうねぇ)
(ダブルデートもしていたぜよ)
(そういえば前に高雄山登ってましたね)
(ブン太は彼女よりも凄い弁当を持っていってしまって)
(芥川くんは彼女のお弁当よりも、丸井君のお弁当を食べてしまったんでしたっけ)
((二人とも次の日フラれたって))








「芥川さん、カノジョいるんスか…?」






―いまもいるかは知らねぇけどよ。
俺も前の彼女と別れてしばらく経つから、ジロ君とそういう話もしなくなったし。
つーか、こいつ、ジロ君が今まで経験無しとでも思ってたとか?
まーアイツの雰囲気的に、そういうのと無縁に見えるっつーのもあるけどよ。
でも、バッチリ彼女いたし、年上のオネーサンと付き合ってたこともあるしなぁ。
なんて言ってやったらいーんだ。
お前の『芥川サン』はとっくに童貞でもねぇよーって?
言ったらショック死しちまうんじゃねぇか?
ていうか。
『ジロ君、男だぞ?』って言ってやったほうがいいのか?
こいつがあまりにも自然に言うモンだから、突っ込むタイミングがー




力なく呟く切原に、なんて答えていいのやら。
頭の中ではアレコレと出てくるのだが、それをうまくまとめられない。
というか、自分の知っている芥川の女関係を言っていいのかどうか。
言う分には芥川も気にしないとは思うが、それを切原に伝えたら、さてどうなることやら。







「まぁ…聞いといてやる」

「まるいせんぱ…!」

「好きなんだろ?」

「う…っ…は、ハイ」




(…話がおかしな方向へ行きましたね)
(ブン太。さらにたきつける気かの)
(というか、自分に向かっている矛先を逸らそうと必死なのでは?)
(そうとも言う)
(芥川君は男性なのですが、見事にすっ飛ばしましたね)
(まぁ、ブン太も割とモラル無い方じゃけぇ)
(サラっと言うようなことでも無い気がしますがーって、『偏見が無い』といいたまえ!)
(赤也は意外じゃったの〜)
(そうですね。いくら芥川君が可愛い系とはいえ、まさか男に走るとは)
(おまんが可愛い系とか言うのも意外だが)






「ええい、泣くな!」

「っ…泣いてねぇ」

「つーか、仮にジロ君に彼女がいたとして」

「彼女…!」

「(仮)だ、(仮)!
それで、諦められんのか?」

「……」

「ジロ君に彼女がいたり、誰か好きな人がいたら、どーすんだ」

「……」

「諦めンのか?」

「……出来ねぇ」

「だろい」

「丸井先輩と付き合ってるかもしれないと思ってても、やっぱり好きだし」

「じゃあ、突っ走れ!」

「え…?」

「お前は何事も直球だろ?
うじうじしてねーで、本人にズバっと言え」

「…」

「鈍くて伝わんねーとか言ってねぇで、伝わるまで告白でも何でもしてみろい」

「…ッスよね」

「真田に挑戦状叩き付けた時みたいに、真っ直ぐぶつかってみろよ」

「はい!」

「よし、この件は終了!ってことで、俺は帰る」




(なるほど、帰りたかったんですね)
(いつもならブン太も夕飯の時間)
(では、私たちも本屋に行きますか)
(そうじゃの)



「あ、丸井先輩!」



すでに走り出した丸井の背中に、念押しの声をかけた。


「ちゃんと聞いといてくださいねー!」




背後からかかる後輩の声に、大きく両腕で○をつくり、振り返らず走り去る。
目指すは自宅!
だって、丸井家の夕飯の時間だから。






一方の切原はというと、散々先輩に日ごろの鬱憤を晴らしたせいか。
それとも、先輩とのやりとりでふっきれたからか。
スッキリした晴れた表情で、帰路についた。




切原赤也・16歳。
恋をしたようです。









(終わり)


>>目次 ....................... >>オマケ

***************

基本的にウチの赤也さんは乙女系ですな。
ジローさんの方が大人で、知っていてしらばっくれてる感が。

詐欺師と紳士で会話やらせると、ぽんぽん会話が出てくるというか、ボケと突っ込み的な?
やっぱりダブルスって基本的にボケとツッコミで成り立つようになるようになっているんですねーなーんて。
例:忍足+向日、丸井+ジャッカル…他、多数。

赤也にこのまま告白させに行こうかな〜


[ 31/97 ]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -