仁王くんと慈郎くんのほのぼのした日3




「さてと」


携帯をポケットにしまい、少しばかり残ってしまった、冷たい紅茶を飲み干した。


「もう行くんか?」

「うん。それ、届けないと」


ごめんね?
と少し困った表情を浮かべた慈郎に、首をふって、読みふけていた本を閉じた。


「届けた後はどうするんかの」

「妹は美加ちゃー…えっと、友達ん家に泊まるから、多分そのままバイバイかな」

「おニィチャンは?」

「そうだね〜とりあえずショッピングモールだから、スポーツショップみてこよっかなー」


ついでに帰りに隣のコミック館寄ってーって、今から寄ると間に合わなそうだしね。
あとは適当に夕飯食べて、帰って寝る!
今日はお父さん飲み会で、兄ちゃんもバイトでいないし、お母さんは岳人ん家の母さんと出かけるから誰もいないの。
忘れてたんだけど、さっきお母さんからメールきて、思い出した。
岳人んとこ行こうと思ったんだけど、あいつお父さんとケンカしたらしくてまた忍足ん家に押しかけてるっていうから。



なんて、先ほどの30分で仕入れたメール内容&本日これからの日程を告げてみると。



「じゃあ、うち来るか?」

「ほぇ?」

「俺ん家、今日夕飯ジンギスカンじゃき」

「え、まじまじー?!」

「北海道の親戚から大量に送られてきたんでの」

「ちょーうらやましぃ!」

「来るか?」

「行くいくー!!あ、でもいいの?明日部活じゃねぇ?」

「氷帝はどうなんじゃ?」

「オレんとこは無いけど、立海はあるんでしょ?」

「よぉ知っとるな」

「明日本当は、まるいくんと約束してたんだー」

「ブン太と?」




『ジロ君ちの近くにオープンしたパティスリー、案内しろい!』

お誘いのメールがきたが、OKの返事をした直後に急に練習はいってダメになった…と、悲しみのメールがきたのが数日前のこと。


「そういえばブン太が騒いでたロールケーキ専門店…じゃったかの」

「そうそう。このまえ、オレん家の近くに出来たんだよね〜。
開店のとき買いに行ったんだけど、ちょー美味しかった!」



…と丸井についメールしたら、連れて行け!との返事がきてのやりとりだったのだけれど。



「じゃ、ちょっと寄ってみるかの」

「におくん、甘いの食べるっけ?」

「少しはな。家に姉ちゃんがおるき」

「あ、そっか。弟もいるもんね」

「あいつもケーキ好きじゃけ」



慈郎も、妹が可愛くてしょうがないが……
こちらの仁王にとっても、年下の弟はなんだかんだカワイイ存在で。




「じゃ、コレ(本)置いたら、いったんオレん家寄っていい?」





友達の家に泊まるのはメールで報告でいいとして。
自転車置いて、ケーキかって、電車のって、神奈川くんだりまで行くとするか。





ついでに…というか、やっぱりラケットはリュックにさすことにして。

スポーツウェアも一応入れておこう。
明日、立海の練習のぞくついでに、まるいくんのプレーをウォッチして。
そんでもって、チャンスがあればコートに入って、誰かに相手してもらおう。

仁王なら面白がって、自分の立海ジャージを貸すかもしれない。



色々と思い浮かんではナイスアイディア!とリズミカルに携帯メールを打つ。
そんな慈郎の考えを先読みしたのか、ニヤリと口角をあげた仁王が一言。



「俺んジャージ着て、一日立海テニス部で練習出てみんしゃい」




真田を騙すぜよ




以 心 伝 心 !


びっくりまなこで仁王を見上げると、面白そうな企み顔で返された。



「ばれないかな〜?」

「幸村にメールしとけば平気。
アイツもこういうの好きじゃけ、面白がるに決まってるぜよ」

「柳生には怒られそう〜」

「いんや、柳生はあれでいてユーモアある男」

「あー…オレがいる疑問よりも、『芥川くん、ちゃんと練習したまえ!』って言いそう?」

「そうそう。柳も面白がるタイプじゃき」

「ダブルス2が一番まともにビックリするかな〜」

「ジャッカルは黙ってるだろうが、ブン太がアタフタするかもしれんな」

「まるいくん、ドッキリに弱いもんね〜」

「騙しがいのあるヤツぜよ」





こうして二人はシネコンに赴き、慈郎妹に写真集を届けたのちにアレコレ寄り道しつつ、仁王宅へ向かった。
話題のロールケーキに仁王姉もたいそう喜び、慈郎を何度も可愛い可愛いと猫かわいがりした。
仁王弟はというと、兄の友達とは思えない、可愛らしいふわふわした、陽だまりのようなお兄さんの登場に…癒されたらしい。


その夜、二人は真田対策としてアレコレ作戦を練りつつ、仁王の変装グッズを持ち出してわーきゃー盛り上がった。
そこへ幸村から『大歓迎』なメールが届き、さらに電話もきたもんだから、余計にヒートアップしてしまい…

お遊びだった変装計画が、幸村の手が加えられたことにより、やけに本格的な『真田だまし』のシナリオが出来上がったという。








翌日。




少しおおきいジャージに身を包んだ、可愛らしい立海テニス部員ができあがった。


気づいていない上級生のレギュラー部員とミニゲームを行い、勝ってしまったことから俄然注目が集まり、大半の部員にバレた。

ただし。



真田は果たして気づいたのかどうなのか。





練習中、慈郎が素晴らしいプレーをするたびに感心する真田をみて、笑いを堪える幸村の姿があちこちで目撃されたらしい。









(終わり)



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BOOKS-A 専門書多し
BOOKS-T コミック館
となると、BOOKS-Bは何だろうなあ〜ファッション雑誌とか新作とかとりあえず新しいもの集めました系かしら。

>ATOBE.co.ltd系列の書店



ニオジロで何かを書きたかったんですが。
何故か芥川家から始まってしまい、このままじゃ仁王が出る前に終わる…!
と出してみたら、そこはかとなくカプにならないような、微妙なような。
友情話、ということにしましょうか。お付き合い前、にしましょうか。ええ。

ジロくんの妹はしっかりしてそうだなということで小学生にしてみました。とりあえず小学校高学年設定で。
(3歳くらいだった気がしないでもない。まぁ、よしとします)
兄もしっかりしてそう。見た目はフワフワ似ていそうだけど、しっかりしてそう。
ジロくんのお兄さんは、寝ちゃったジロくんを部屋に運んであげるくらいですし!
妹も可愛いんでしょうね〜

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