丸井くんの場合3






すぴー、すぴー







ぽかぽかあったかいお日様の下。
お花畑では岳人がひらひら、翼ひろげて舞ってる。
いつのまにチョウチョになったのかな〜

でも、翼ほしーって小さいときから言ってたから、夢かなったんだね。


あ。
かまきり先パイが岳人のこと、いじめてる!
ゆるさねぇ!助けないと………


あれ?



足がうごかない。。。オレ、どうしちゃったんだろ。。



岳人、逃げろっ!!



かまきり先パイの鋭い手が、岳人のキレイな羽をー 


あ。。。正義の味方。
オレと岳人を助けてくれる人といえば、小さい頃から決まってたね。


亮ちゃん。。リスになってるしぃ。


そうえいば、小学生の時だっけ。
岳人と遊んでたら、上級生にからまれて、苛められて、オモチャとられたあげく泣かされた。
わんわん泣いて、同級生もオロオロしてたけど、誰も上級生にはむかえるわけもなくて。
そんな中、亮ちゃんだけは気にもせず上級生退治に立ち向かった。
『姑息なヤツは許せねぇ!』
って。
オレと岳人のオモチャもとりかえしてくれて、、、そんで、3人一緒に遊んだっけ。


チョウチョがリスのまわりを嬉しそうにふわふわまわってる。
良かったね、岳人。

あれ?
リスの後ろから、、、、、、ワンコ?

あ。
オオトリだ、あれ。

くすくす。

オオトリ、わんこになっても亮ちゃんの後ろくっついてるんだね。
相変わらずシシドさん命だしぃ〜。

あ、ちょうちょ岳人の後ろに、黒いのが。。。。かぶとむし?
ていうか、ひよCだしー。

なんだ?ひよも岳人いじめんのか?

そんなの、オレが許さねぇしぃ!
岳人んとこ行かなきゃ!



…なんで動けないんだよぉ。




あ…違った。
確かにひよしだけど、、、なんか、心配そうに岳人のこと、見てる?

そっかぁ。
岳人がふわふわしてて、危険に気づかず興味心で飛んでっちゃうから、しんぱいなんだな。
でも、ひよCはかぶとむしで、あんまり飛べないから、ひたすら後ろで見守るだけ。


ていうかオシタリは何やってんだ。
岳人の面倒みんのはオシタリの役目でしょー?



『天誅!』


突然声が聞こえたと思ったら……カマキリ先パイが伸びてる。
リスな亮ちゃんに追い払われて、逃げていったはずなんだけど、、、


さすが岳人の保護者。
オシタリイーグルが、カマキリ先パイに何かをしたみたい。


そのままちょうちょ岳人の上空を旋回して、ひよC含めて二人を見守ってるんだね。



となると、跡部はー……あ、ちゃんと人間だ。


隣にエリザベートもいる。
ティータイムなんだね。…って、ここ、跡部んとこのお庭?
あとべっきんがむ宮殿とは違うトコみたいだけど、なんだかお花や木々、池、…全体的に、跡部ん家のガーデンの雰囲気。


そっかぁ。

オレたち、跡部の庭で遊んでたんだね。



あ。
跡部が食べてるの、ふわふわシフォンケーキだしぃ!
生クリームとブルーベリージャムつきの、、、オレも大好きなやつ!!

いいなぁ〜たべたいぃ。



跡部んとこに行きたいのに。。。なんでかわかんないけど、足も手も動かない。
皆のことは見えるのに、なんでオレのこと、誰も気づかないの…?

ここにいるのに。。


ねぇ、岳人、亮ちゃん。。早く見つけてよ?
かくれんぼしても、いっつも絶妙なところで隠れてるオレを見つけるの、岳人でしょ?
そんでもって、一緒に昼ねしちゃったオレらを見つけてくれるのは亮ちゃん。

中等部になったら、一緒にいる機会も減っちゃったけど…
友達になったオシタリが、裏庭や中庭、屋上にいるオレを見つけて運んでくれたり、
部活終わって寝ちゃったら、必ず跡部が拾ってくれて、送ってくれたり、

ひよCやオオトリも、なんだかんだで遠征や大会のときに迷子になってたら、必ず探して、氷帝の皆のところに連れてってくれる。

樺ちゃんは……感謝感謝だしぃ。

跡部の『おい、樺地。ジローをよんでこい』に100%答えてきた。
オレがどこにいても、皆が見つけられないところで寝ていても、樺ちゃんは絶対に探しだして、オレを運んでくれた。


そっかぁ。


岳人ちょうちょやリス亮ちゃん、わんこオオトリにかぶとむしひよC。
オシタリイーグルに跡部。

みんないるのに、オレに気づかないのは……樺ちゃんがいないからなんだね。

樺ちゃん。どこにいるんだろう?



オレ、ここにいるから連れて行ってほしいのに。
『ここだよぉ!』って叫びたいけど、足と手だけじゃなくて、…声も出ない?




やがて、みんなが跡部のテーブルに行って、それぞれお茶タイムに入っていった。


岳人はミルクティ、亮ちゃんは……ほうじ茶だね。
オオトリとひよCは紅茶で、オシタリはハーブティ。
見事にバラバラだけど、ミカエルさんは苦ともしない。

さっすが、跡部家の執事さん!



おーい、オレも混ぜてよ〜?



・・・。








…なんでだよぅ。







みんな、楽しそうでいいなぁ。

ひょっとして、オレと樺ちゃんだけなの?




…あ!




樺ちゃんっ!!


樺ちゃんも跡部と一緒で、ニンゲンだ〜。
新しいケーキ持ってるしぃ。


チョコムースケーキ?チョコケーキ??


オレが大好きな、チョコレートのケーキ。。。



樺ちゃん、樺ちゃんっっ!!
ここだよ、オレ、ここにいるよー!!


気づけー!!お願いぃぃいいっ











やがてお日様がキラキラしていた青空も、すっかり暗くなって、空はお星様のキラキラに変わった。
涼しい風がふいて、跡部の庭に咲いているお花の香りが漂っている。


みんな、おうちに帰っていったみたいで、楽しそうな笑い声も無くなって、物音の無い闇。



おっかしーなぁ。

皆が気づいてくれなくて、寂しかったんだけど、、、でも、ぜんぜん眠くないよ。。
いつもならすぐ寝ちゃうのに、なんでかな。
動けないから?

でも、動けないならそれはそれで眠くなりそうなんだけど。。


ただ、意識だけあるのかなぁ?
ていうか、ここって、どこなんだろう?


オレ、どこにいたんだっけ…?
誰かと一緒じゃなかったのかな。



昔はよく岳人と亮ちゃんと一緒で、中学に入ってからは跡部だったり、オシタリだったり、滝だったり。
なんだかんだでよく面倒みてもらってたし、誰かしらそばにいてくれた。
中等部になって、『亮ちゃんはハズいからヤメロ』っていうから『宍戸』にしたけど、咄嗟に出てくるのはやっぱり『亮ちゃん』
岳人も亮ちゃんも、それぞれ友達もできたから、幼稚舎のときほどしょっちゅう一緒ではなくなったけど、、、
でも、同じテニス部だし、岳人はお隣さんだし、、、亮ちゃんとは3年で同じクラスにもなって、また面倒みてくれるようになったし。



高等部に入っても、つるんでるのは代わり映えのないメンツではあるんだけど、、、
もっと、近い部分で一緒にいることが増えた人がいたような。


もっともっと、オレの中まで入り込んできた、鮮やかな色がー




そう、こんなふうに、真っ赤なー





『…やっと、見つけた』

え?

『勝手にいなくなるんじゃねぇよ。どんだけ探したと思ってんだ』

ええ、と…

『っつーか、何つかまってンだよ』

つかまってる…?

『しょーがねぇなぁ』



突然あらわれた真っ赤な……ハチ?


『…よし、切れた。こい!』


ハチさんに抱えられて、ずっと動けなかった場所から解放された……オレ、つかまってたの?


『ったく、どんくせぇてんとうむしだな、お前は』

てんとうむし…

『クモになんて捕まってんじゃねーよ』



…そっか、そういえば、オレ、てんとうむし。。
ふわふわ跳んでいった岳人見つけて、追いかけようとしたら急に動けなくなっちゃったんだ。。



で、このハチさんは…?



『おい。何ボーっとしてんだ。帰るぞ』



かえる…?




『ほら、もう怒ってねぇから。家に帰るぞ。
お前の好きなハンバーグドリアだし、トマト抜きのサラダも、デザートのシフォンケーキも焼いた!』



シフォンケーキ!


『ちゃんとふわふわの生クリームと、ブルーベリーも摘んできたヤツで煮た、出来たてジャムだし。
ココアも淹れるし、シーツも洗濯したから布団も枕もお日様のにおいで気持ちいいぞ?
風呂はいって、髪も乾かしてやるし。ええと、後はー』


『……おれ』


『…迎えにくんの、こんな時間になって、ごめんな?』

『………っ』

『よしよし、帰ろうな』

『…うん』

『なぁ、今日は一緒に風呂はいっていいだろ?』

『……やだ』

『なんでだよ』

『…風呂、入るだけじゃ終わんない気がするしぃ』

『とーぜん』

『……お風呂でナニする気?』

『可愛い恋人と一緒にお風呂なんて、ヤルことはひとつ』

『お風呂はカラダを洗うところなんだしぃ』

『もちろん洗うとも!』

『…余計なことしないなら、いいけど』

『余計なことは何一つないから、安心しろい』



余計なことしかしない気がするよ。。。ハチさん。





そっかぁ。
オレ、ケンカして家飛び出しちゃったんだね。
どっちが悪いのか、何が原因だったのか、あんまり覚えてねぇけど、、、



でも。


岳人に亮ちゃん、オシタリに跡部。
ひよCもオオトリも、…樺ちゃんでさえ気づかなかった、クモの巣にひっついちゃったオレを…


星が眩しいとはいえ、この暗い空の下で、見つけてくれたんだね。





ありがとう。











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