夏の花火と泡沫の心 | ナノ
「学園祭についてどうしても決めなければならないことがあるので、夏休みに集まりたいのですが、空いている日を教えて頂けますか。時間は取らせませんので。確か一縷も桜川も実家は遠方ではありませんでしたよね。」
夏休みが始まって十日程が経った時のこと。
「夏休みの間に集まりたい」という趣旨のメールが、会長から届いた。
あれ?会長俺のメアド知ってたんだ…いつ教えたんだっけ、全く記憶にない。
正直、学園の外で会長や一縷に会うことは抵抗がある。
ましてや、会長とはあんなことがあったばかりだし。
一縷とだって、嫌われていた頃に比べたらだいぶ関係性は良くなったけれど、何だかよそよそしいというか…
「このメール、会うことが最早決定事項になってるし…」
はあ、とため息をつきながら「分かりました。俺はいつでも大丈夫です。二人に会わせます」と返信を送った。
「会いたくないなー…」
クーラーのかかりきった涼しい部屋で誰に向けるでもない言葉を呟いた。
見慣れた部屋に、使い古された教科書と読み飽きた書物の数々。
学園での部屋より、何倍も生活感に満ち溢れていて過ごしやすい、はずなのに。
不思議と落ち着かないのは何故なんだろう。
…ブルルル…
メールの着信を知らせる音がなり、すぐさま画面をタッチする。
「では来週の金曜、午後16時に。一縷にも確認しましたので。何か問題ありましたら仰ってください。」
返信早いな、と思いながら壁に掛かっているカレンダーに目をやった。
来週の金曜、つまりあと5日しかない。
もうちょっと心構えをさせて欲しかった、と思うも時既に遅し。
きっと大丈夫だろう。
学祭の経費や備品の管理について話すだけだろうし。
副会長として会うのだから、俺個人の感情は関係ない。
うーん、とモヤモヤとした気持ちと格闘していると、再びメールを知らせるバイブ音が鳴り響いた。
確認してみると、待ち合わせ場所を知らせるメールが追加して送られてきていた。
確かここって、毎年大規模なお祭りが開催されてる場所だよな…。
「…お祭りは誘われたのに、結局行けなかったんだもんな…」
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