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The day when he isn't there…




時間が廻る。秒針が進み新たな時を創造していく…
「現実」へと。


「エリオット、ごめん…」


それしか口から紡ぎだすことが出来なくて。 僕の声が現実でないエリオットの元へ届くはずがないのにさ。
それとも僕は夢を伝って彼に本当に会えたのだろうか?
彼と過ごしてきた日々が近かったはずなのに遠く感じられて、思わず「懐かしい」と口から滑り出ていた。


「僕が映す世界にはもう―“エリオットはいないんだ”―」


現実は肯定したけど。でも肯定した事実が更にのしかって後悔ばかりが押し寄せるから、だから先に続くはずの言葉は言えなかった。

「リーオ様?起きられましたか?」

まだ聞き慣れない声…僕に敬意を払う言葉。対等ではない立場。
目に映ったのは金と赤のオッドアイ。

「…ヴィンセント…おかしな夢を見た…」


―夢、だったのか?―

まだ手に感触が残っているのに?意識が戻る直前、僕はエリオットの手に触れた。
僕自身実体を持っていたかどうかも分からないのに。だけど僕は触れることができた。

―それに…曖昧な記憶だけど僕がさっき見た光景、本当に体験したような…―

触れたエリオットの手は不思議と夢でも温かくて、大きくて。

「…エリオットの夢、でしょうか?」

痛い所を突く。触れられると何かで抉られたように胸が傷んで自分では制御することが出来ない。

「…見ちゃ悪い?」


―これ以上踏み込むな…やめろ、やめろ…―


もう戻って来ないものに「望み」を掛けてしまうんだ。泣いても泣いても止まらない涙が、また溢れて止まらなくなるんだ。
涙なんてもう、出ないほど泣いたはずなのに。

「今の貴方を見たら彼は何て言うんでしょうね?」

まるでそのことを考えるのが「楽しい」と言うかのように柔和な笑みをヴィンセントは浮かべていた。

「そんなこと、知るわけないだろ。」

「びっくりした後に、怒り出すんじゃ?」と言おうとしたが切なさが言葉を出なくさせる方が先で。

「エリオットならどんな貴方でも受け入れるんじゃないでしょうか…彼ならね。」

違うよ…エリオットの側にいた「リーオ」はもういない。
僕は君とは正反対の殺伐な道をゆくんだから。

「…そんな訳ない…僕に、怒るんじゃないの…」

「ふふ、凶暴なのは元からだと思いますし、エリオットがそれだけのことで怒るとは思えませんね。
…でも僕が貴方に仕えている、という意味ではどうなんでしょう?」

「………」

大体どういう反応をするのか想像はついた。でも、脳裏に浮かぶエリオットが鮮明になればなるほど空虚感が増してしまう。

「…夢の中でエリオットがさ、『綺麗だな』って…言ったんだ。この眼を…綺麗な訳ないのに…」

不意を突いて出たのは辛いと分かっているはずの“彼”の言葉。黄金の光は幸せなんて運ばない。綺麗なはずの光…
でもそんなものなんて何一つ僕には存在していないんだ。

「僕は綺麗だと思いますよ?リーオ様。」





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