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「僕は…見たくない…!」

ギュッ、と目を瞑っても黄金の光が眼下にこびりついて離れない。

君といる時はこんな感覚、忘れてた―

焦りで思わずベッドに腰を着いてしまった僕の背後で「あれ…俺…リーオ?お前、何一人でぶつぶつ言ってんだ?」とエリオットの声が聞こえた。

「ああ…ごめん。起こしちゃった?」と平静を装いそう言おうとした僕を彼は遮る。

「お前…」

次の瞬間、彼の青い瞳は迷うことなく晒された僕の瞳を捉えた。

「リーオ?」

大きく見開かれた彼の瞳は驚いているようにも見えたけれど、何か別の感情も含んでいるように見えて。

「……綺麗だな。」
聞こえないくらい小さな声で彼がそう言ったのに対して思わず「―え?」と聞き返してしまう。

「お前の、眼。」

彼にしては珍しくポツリ、ポツリと途切れ途切れに言葉を言っているのに違和感を覚えてしまう。

「何言っているのエリオット。君、そんなこと言ったことないじゃないか…どこか具合でも悪いの?」

普通に声を発することが出来ない。思った以上に僕はさっきの言葉に動揺しているのだろうか。何であるのかも分からない声に。
立ち上がり彼の元へと歩く最中、「お前は…」と呆れたように口に出すエリオット。

「っ…人が褒めたと思ったらその言い草かよ…お前の様子が最近変だから心配してやってるものを…」

「心配?」

「…お前が悲しそうに笑うからだ。それに、俺のいない所で泣いてるだろ?」

―なん、で…さ―

僕が心配しているのは君のことなのに、何故君が…僕の心配をしているんだよ?

「…ああ、もう…」

のし掛かる闇を君は知らないんだ。知っている訳がない。
だからこそ、沸き上がるのは悔しさに似た悲しさ。

「エリオットのバカ…」

むっ、としたような顔を浮かべるエリオット。

「ひでえ言いようだな、おい。……でも、」

切られた言葉が合図だったかのように彼が優しく微笑んだ。
それは曲が綺麗だと言っている時笑みとも、花の華麗さに心惹かれている時に浮かべた笑みとも違っていた。

今まで見たことのない優しい表情―

「お前の眼を見てると何も考えられなくなる…」

青と黒がぶつかり合った。
今までにない、衝動に駆られ僕は思わずハッとする。決められた運命のように意識が何かを啓示した。

「それは…どういう意味?」

少し間が開いて聞き取れないくらい小さな「言わなくても、分かるだろ…」という声が聞こえた。

ああ…何だろ、この感情は。
愛しい…そう言い表せばいいのかな?独占欲の塊みたいに「離したくない」と願って止まない。

世界は進む。「行かないで」と思っても無情に世界の中の時は進んでゆく。
それでも今は今だから―さ。

「ありがと、エリオット。」

不思議と意識せずに口から発せられていたそれは本当にそう思ったからだ。
どうしてだろう…胸の中の不安が少し、少しだけど無くなったような気がした。

「何だよいきなり…気持ち悪いな。」

「せっかく人が好意を述べたのに君はそんな言い方しか出来ないの?それに君…顔が真っ赤だよ?」

「とりあえずお前は減らず口を直せ!ちっともあの時から変わっちゃいねえ…」

「君だって変わってないじゃないか。」


ずっとずっとこの時が果てないで、温かな時が途切れなければいいのに―




『エリオット…ごめん。』




温かなエリオットの温もりを感じている僕の横で小さな声が風の音に掻き消された―…





To be continue…




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