新緑の香りと澄み渡る青空 | ナノ
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「じゃじゃーん!見ろよこのピアス!昨日見つけたんだけど綺麗だろ?ロードナイトっていう天然石なんだってさ。春乃のイメージにぴったりだと思って」
彼がキラキラと輝く金色の髪を風に靡かせながら言う。
太陽に照らされた姿は、彼の魅力をより一層深めていた。
「…これ、俺にくれるの?」
「春乃のために選んだんだから、つけてくれなきゃ困る。…因みにこれ、俺とお揃いな」
ちらりと彼の右耳に目をやると、俺に差し出された小さな箱に入った一粒のピンク色のピアスと同じものがつけられているのが分かる。
それは桜の花びらのような、淡いピンク色だった。
「お揃い…?」
「そ。だから早くこれが出来るようにピアス穴開けてよ、絶対似合うからさ」
彼が言うことはいつも絶対で、間違えがなかった。
だから俺は、彼に着いて行きさえすればよかったのだ。
まさしく、俺を照らして導くかけがえのない光だった。消えることない、道標だった。
「じゃあ、秋が開けてよ。そしたら俺、つけるから」
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…また、彼の夢を見てしまった。
寝起きの働かない頭で考えても、夢の中に彼が出てきたことは間違いのない事実だった。
まるで現実のように実態を持っていて、触れようとすれさえすれば触れられそうな気がしたのに。
すぐそこにいるのに、いたのに、俺が今いるここには彼はいない。
ならいっそのこと、夢から醒めなければよかった。
一縷に素を見られてしまったあの日から、俺は過去の夢を見る頻度が頻繁になっていた。
「綺麗だと思うけど。…俺はその目の色、綺麗だと思う」
言ってしまえば、たった一言の言葉。
別に何か特別なことを言われたわけでもなく、一縷も思ったことをそのまま口に出しただけだったのだろう。
でも、俺にとってはその一言が特別な意味を持っていた。
大嫌いだったこの瞳の色を「綺麗」と最初に形容してくれたのは、秋だったから。
だから俺は自分の瞳を否定することを止められたのだ。
まさか一縷が同じことを言ってくるだなんて、これっぽちも思っていなかった。
あの後、俺はボロボロと零れだす涙を止めることができずに、寧ろ涙はとめどなく溢れていくばかりで、一縷はそんな俺のことを泣き止むまで手を握ってくれていた。
振り払うことを考えさせない程に優しく手を握ってくれていたから、その優しさにずっと甘えてしまった。
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