日常を為すべきだと、刹那

日常を為すべきだと、刹那 | ナノ


「よーし、じゃあ体育祭の種目決めをするぞー」


ザワザワととても騒がしい教室が担任のその一言で静まる訳がなく、俺は内心「あーあ、こりゃキレるぞ」と思っていた。


「お前ら…俺が喋っているのが分からないのか!黙れ!」


ほら、言わんこっちゃない。






俺が所属する2年A組は基本的に成績優秀者の集まりである。基本的に、というのは家柄や学園への寄付金に乗じて、そうではない生徒もいるということだ。
そういう生徒達は、成績があまりよくなくとも見て見ぬ振りをされている。
余程、退学騒ぎになるようなことを起こさない限りはA組にいられるのだ。


この話はおおっぴらにはされていないけれど、学園に所属する人間なら誰しもが知っているんじゃないかな。





俺が思うに、頭がいい奴というのはマイペースな人間が多い気がする。
マイペースか、変人か。
授業なんてちゃんと聞いていないように見えても、テストではいい点数を取るような人間がこのクラスには多い。
所謂天才型ってやつかな。


俺は残念ながら天才型ではないので、それなりに勉強しないと授業にはついていけない。と、いうより公表していないけれど、俺は特待生なので気を抜く訳にはいかない。


「いい加減にしないか…!お前ら頭はいいんだからその素行を何とかしろ!」


語気強く怒鳴っているのは担任の飯島泉先生。
短く切られた髪に、清潔感のあるカットシャツがよく似合っている。
昨年新卒としてこの学園に赴任してきた時はこれほどに怒鳴って怒るということはなかったのに、このクラスのマイペースさ(?)に耐えられなくなったのか、今では毎日のようにこんな感じだ。

かく言う俺も、「泉ちゃん」なんて呼んでしまってる訳で。
このキャラで「飯島先生」「泉先生」呼びはちょっと躊躇われる。


「桜川、お前余ったやつでいいだろ? 」


俺がぼんやりと考えこんでいるうちに、話が進められていたようで、思わず「へ?」と間が抜けた声を出してしまった。


「どうせヘラヘラしてるんだから、何でもいいだろ、種目。徒競走以外で」


「泉ちゃんひどいよ〜。俺だって本気出せば走るの超速いんだからね〜?それとも皆あれなの、俺がかっこよく走ったら惚れちゃうもんね〜?」


「なーに言ってんだ。単純にお前がいっつもヘラヘラしてて、ちゃんと走んねえから徒競走は駄目だって言ったんだよ」


「えーひどーい…泉ちゃん、ひどいよお…」


しおらしくそう言うと、隣の席から「春乃様は本気を出せば凄いんです!だから春乃様に強く当たらないでください、泉先生っ」という声がした。




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