日常を為すべきだと、刹那 | ナノ
「あー、朝か…」
変わらない日常がまた始まった。
雲一つない快晴に、青空と太陽の共演舞台。あー、綺麗だなぁ、吸い込まれそうだなぁ、と思う。
俺のいるべき日常が、そこにある。あってほしい。
俺の朝はとても忙しい。
まず起きたら、ハネまくっている癖毛の髪をどうにかしなければならない。
ストレートアイロンで念入りに髪をまっすぐにしたら、次は金色のスプレーでこれまた念入りに髪に色付けをしていく。
これがやっかいなもので、塗り残しがないかチェックしながらの作業なので、軽く30分は掛かる。光の角度によっては少し青く見える黒い髪が、どんどんと金色に染まっていった。
それが終わると、次はハニーブラウンのカラコンをつける。ここまで終わればほとんど副会長の完成だ。
あとは色白すぎる顔に薄くファンデーションを塗っていく。
うん、これで学園での俺の完成である。
「よーし、おっけー」
気分を上げる為にそう呟くと、俺は大きな伸びをした。
「うわあ…アイツだ。今日もチャラチャラしてんな」
嫌そうな顔をこれ見よがし見せつけるクラスメイトに。
「春乃様!おはようございますっ!」
キラキラした眼差しを向ける親衛隊の子達に。
それに対して笑顔を絶やさない俺に。
…ね?ほんと、大事だよね、笑顔って。
全部を隠してくれるんだもんな。どんなに内側は笑顔じゃなくても、表面を取り繕ってくれる。便利すぎる道具。
俺はそれに依存しすぎている。
分かってはいるが、この安心感に浸ってしまったら二度と抜け出せそうにない。
どうやったら抜け出すことが出来るのかも、分からない。
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