光は見つからない | ナノ
俺は生徒会室から出ると、とめどなく注がれる生徒達の視線にちらっと目を配りながら足早に歩く。
「みんなあ、やっほ〜元気い?」
ニコッと笑顔を見せて歩くと、大抵の生徒は喜んでくれるから。
だから、たとえどんなに疲れていても、笑顔だけは忘れない。
忘れちゃいけない。
笑顔を責務に変えてそれが普通になれば、ほら、笑顔が辛いなんて思わないでしょう?
「ふ、副会長っ!今日の放課後はご予定ありますか?」
顔を真っ赤にして俺の前に立つ男子生徒。俺より10センチは小さい体を萎縮させて、必死の面持ちを俺に向ける。
可愛いな、と思う。本当は、騙したりなんてしたくない。
……けど。
「ごめんねぇ〜今日は用事があるんだぁ…せっかく誘ってくれたのにごめんね〜?」
これは俺の常套句。
皆は俺にセフレが沢山いて、毎日毎日誘いを断ってると思ってるみたいだけど、実際は違う。
俺は自分の部屋に他人を入れたことはない。大体、俺の部屋がどこにあるのかさえ、誰も知らない。ずっとはぐらかしてきたから。
多分皆、俺は自室にはいないで他人の部屋を渡り歩いていると思っているんだろう。
実際の所は、部屋に帰ったら何をするでもなく、…することと言えば勉強と読書くらい。そう言うとすごく、真面目に聞こえるけど、そうじゃない。それくらいしかやることが見当たらないのだ。
心が空虚さに支配されて。
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