光は見つからない

光は見つからない | ナノ

桜が舞っている。


ヒラヒラ、ヒラヒラと風の余韻を残しながら。
雲一つない青空に、桜の花びらが舞ってどこかへと消えてゆく。
時折地面に投げ出された花びらは、幾何にも満たないその命をそこで終わらせる。
その幻想的な光景を見て、俺の心はちくり、と痛んだ。



新学期。それは心躍る季節のはず。


けれど、俺の心に突き刺さった棘は消えることがない。
消えるどころか、現実を直視せず逃げることを繰り返す度に複雑な傷になっていく。


「何回目かな…これ」


誰にも聞こえないように小さく呟いたつもりなのだが、後ろにいた会長は怪訝そうな顔をした。その綺麗な顔が、少し怪訝そうに歪められる。

ボーっとしていたから、思わず素で呟いていた。
ヤバい。ばれたらまずい。


「何か言いましたか?桜川」


よかった。聞こえてなかったらしい。まあ、聞こえていたら大変だったから、よかった。



俺は冷や汗が背中に伝うのを感じながら、
「ん?なんでもないよぉ〜」
といつもの「俺」で答えた。何もおかしなところはない。いかにも何も考えていなそうな、いつでも楽しそうな、威厳のない副会長。

ヘラヘラ笑って、語尾も伸ばして。


……うん、いつもの、俺だ。



「…そうですか」



会長はその綺麗な顔に何の表情を浮かべるでもなく、静かに答えた。



頼りになる会長。頼りにならない副会長。
この学園の生徒は、皆口々にそう述べる。それも仕方ない。すべて、自分のせいなんだから。


俺はチャラチャラしていて、ヘラヘラして、特定の人間とはつるまない。
自分から何を言ったりアクションを起こした訳ではないのだか、俺が二年に進級する頃にはすっかりチャラ男のレッテルを張られていた。



そりゃ、そうか。こんな金髪で、ピアスじゃらじゃらで、制服着崩してたら誰だって俺のことをチャラ男だと思うよね。しかもあんな喋り方で、いかにも遊んでそうで。



自分が逆の立場でも、そう思うよ。間違いなく。



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