愛とし、乞う、道標。




私は君を愛していた。身を代償にする程、愛していた。

…好きだった。…大好きだった。

この感情を言葉にすることは、恐らく出来ないだろう。それ程に、私の“好き”は普遍から歪曲している。
君がいなくなってしまったけれど、私は他の誰かを好きになることなど出来っこない。
唯一無二の君を、私は…






初めて君と出会ったのは、桜舞うこんな日だったね。
君の笑顔は誰よりも綺麗で、純粋で、私は一瞬で君の虜になってしまった。
…馬鹿みたいに恋に落ちた。

ほんと、馬鹿みたいだ。

それまでは恋なんて、一瞬で恋に落ちるなんて、そんなことありえないと思っていた。
君は、私の世界を変えてしまったの。
…白黒の世界に色をつけてしまったんだ


君は私にとても優しくしてくれた。
申し訳なくなるくらい、優しさを与えてくれて、一緒にいる時をかけがえのない“宝”にしてくれたんだ。



“君には光が似合うよ”



…なんて。

どうしてそんなことを言ったの?



私にとっては君が光だったのに。
道を照らす光だったのに。




どうして世界は、私に対してこんなにも冷たいんだろう。


好きを求めて、好きを与えて。
愛し愛され、満たされて。
お互いがお互いに手を伸ばして。
突き進む道は同じで。



今になって、私は思うの。愛情って鋭利なものだよね、って。

こんなにも苦しくて苦しくて涙が止まらないのなら、君に出会わなければよかった。君のことなんて知らない方がよかった。


ねえ。どうして?
どうして…



どうして貴方はいなくなってしまったの。






君のいない世界は私にとって価値がない。
白黒の、淡白な世界。


私は誰にも心を開かない。
誰も必要ない。何もいらない。


だって、欲しいものは二度と手に入らないのだから。


消えてしまったのだから。


どんなに慟哭しても姿を表してはくれないのだから。






今年もまた、春がやってきた。

ヒラヒラと舞う桜が掌から零れ落ちていく。儚くて脆い花弁はまるで君のよう。
君の笑顔が、優しさが、一緒に過ごしたあまりにも短すぎる時が脳裏に浮かんでは消えてゆく。
刹那の光はすぐさま暗闇へと姿を変えてしまう。


愛は苦しみだ。
人を愛するということは一種の罪を犯すということなのだから。…世界は数えきれないほどの罪で出来ている。
けれど“絶望”に身を沈めることはできない。
だって、君と過ごした日々を絶望で象ってしまったらあまりにも悲しいでしょう?
ほんの少しの希望を残しておくことくらい、私にだってできるの。



好きでした。
私は君を、愛していました。
…愛して、いました。

与えられた愛を、私はこれからも背負ってゆく。


だからどうか。
君はいつまでも私の道標であって欲しい。
私という人を形作る、唯一の道でいてほしい。


−ポツリ、と一粒の涙が零れた。


桜の花弁も哀愁を纏いながら零れ落ちた。
それはまるで君の姿を見ているかのようで、私の目からは更にたくさんの涙が零れ落ちた。



鋭し。
疾し。



“とし”愛は君と私とを結ぶ道標。



愛を乞う。


−私は君が好き。



身を粉にして叫ぶの。




“愛してる”ってね。










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