廻る。





ある少年達の話をしよう。
愛を求め、それを感じ、呑まれ、歪曲した世界を生きる彼等の…
そんな、見るに堪えない刹那の時の話を今ここに呈そうと思う。



絶望の淵には一体何が残るというのだろうか?






World0:correct



少年は静かに微笑んだ。
成熟しきっていない顔つきに似合わぬ、妙に大人びた微笑だった。
深淵に身を沈め投じたかのような、まるでそんな風な。
彼の黄金の光が舞い散る瞳は常世の闇だ。光が差し込むことはない。
彼自身既に光を拒絶していた。手を伸ばそうとも、足掻こうともしてはいない。



―望みはただ一つ。

それは許されることではない。断じて、成されてはならないことだ。
けれど、そんなことはどうでもよかった。
黒のベールを被った己が、その容姿に相応しい“業”を犯すだけだ。何もおかしいことなどない。生きなければならない人間を、取り戻す。それだけのことだ。


「…僕は君に、未来をあげたいんだよ」


今にも消え入りそうな声で彼は呟くと、「だから、僕は…」と言葉を続けた。

小柄な少年が背負う業はあまりにも肥大なものすぎて、業を業一言で片づけることができない。


―ならば、いっそ…!
―いっそ僕は、罪を感じられないくらい、罪を犯してしまおう。
―綺麗な夜空が唯の暗闇に見えるくらい、頬を照らす朝日が心に沁みることなどないくらい、落ちぶれてしまえば…そうすれば、いい。


少年は強く思った。


「…迷うのはもう終わり」


眼下に煌めく光はアヴィスが作り出す未知なる幻想だ。
否、幻想が幻想であるかどうかも分からない。数か月前はここに立っていることなど考えもしなかったのに、今となってはアヴィスに縋り付かなければならない己がいる。
…皮肉な、ことだ。
“彼”の嫌っていた立場に身を置き、その立場を利用して“彼”を助けようというのだから。つくづく世界とは希望を孕まないものであると感じる。


彼は足を踏み出した。
不思議なことに、恐怖は感じなかった。むしろ、言いようのない恍惚感が胸に満たされて心地よかった。



何故って?






―だって、これでエリオットは救われるだろう?






これでやっと、君が笑う世界を――――――!










Next
novels

>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -