brightness【光】






自分を見つめてみると 何も見えないことに気がついた
降りしきる雨は ただ俺を濡らしていく

Where is my brightness?
猛り狂う感情の中で
Where is my love?
自己を捨てることしかできない

違うよ、と泣き叫びながら光の雨に身を委ねる
愛されたい 愛されたくない 本当の俺を見てくれ
歪な愛を受け取るくらいなら 愛情なんていらないじゃないか




他人を見つめてみると 全てが見えることに気がついた
雨上がりの空 雫の余韻が煌めく

There is my brightness.
溢れ出す感情の中で
There is my love.
自分は自分なんだと泣き叫ぶ

そうだ、と泣き笑いしながら光の雨を掴む
愛されたい 愛されたくない どの俺も俺だから
例え不完全でもいいじゃないか 正常な愛を与えてくれるなら

愛されない俺を愛してくれ











低音のベースが最後に余韻を残し、曲は終了した。

シーンと静まり返った会場の様子に気が付かない程俺の心は激昂していて、掌からはじわっと汗が滴っていた。

―凄い…

人の心の奥底に何かを響かせる、ってこういうことなんじゃないだろうか?
バンドのメンバーそれぞれが猛り狂うように己を主張して、…けどそれはバラバラで纏まりがないんじゃなくて、ちゃんと一つの音楽に集結している。
伸びの良いしなやかな歌声も、胸にズンと響くドラム音も、間奏でのギターのソロパートも、そして基盤に添えられたベース音も。どれもこれも一つの音楽を作り上げるのに不可欠なパーツになっていて。

「すっげえ…」

無意識に感嘆の言葉を呟いたのと、会場中が「わーー!」という大喝采に包まれたのは同時だった。
恥ずかしながらも多田の存在を忘れかけていた俺は、慌てて彼のいる方へと体を向ける。

「おい、多田…って、…え?」

彼は、泣いていた。
多田の瞳からはポタポタと透明な涙が溢れ出して、それは地面へと滴り落ちていた。
多田が見つめる先には花宮の姿があって、花宮もまた多田の姿に気がついたようだった。
同じ姿形をした二人の視線が、パズルの最後のピースがはまるかのようにバチッと合う。今まで噛み合うことのなかった正反対の色彩を持った歯車のパーツが、今この瞬間かっちりと嵌まる音がした。

運命の歯車が動き出す音が。




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