最後に残しておくべき光



これは何なのかな…?
僕の心に渦巻くこの感情は、なんなのだろう?
すっぽりと空いた穴でもない、でも完全ではない。何かが足りないんだ…。
だから僕の心はその足りないものを埋め合わそうと必死で、必死で、今はもういない彼の姿を追いかける。


ああ、“何か”なんて言わなくたって足りないものは一目瞭然じゃないか。


うん、僕はね。
理解してるんだ。…そんなことをしても、彼は戻ってこないってこと。

わかってるよ?全部。

“あの時、ああしていればよかった”と嘆いてもその時は戻ってこない。
…それも全てわかってるんだ。


でも、それでも。
心では理解しているけれど、だからこそそれに足掻いて、反逆してやりたいと思う。
事実を認めることを許してしまいたくない。
僕はどうしようもない愚か者だ。
彼のことを考えれば考えるほど僕はなんて愚かで、浅はかで、最低な人間なんだと考えてしまう。


これは僕に対する代価なのだろうか?
眩しすぎる光にすがった代価がこれだとしたらそれはあまりにも理不尽じゃないか。
何故制裁を与えられるのが僕でなく彼なんだ?
エリオットは悪くない。悪くない…のに。
彼は僕とは正反対の人間で、正直言って羨ましいなんて何回心に思ったか分からない。
もはやそういう感情では言い表すことが出来ない。
そんな彼が僕を必要としてくれたことが僕にとって奇跡で、唯一無二の光で。
闇にいる僕でも光になれるのだろうか?…なんて思ったりもして。


「…ごめん…エリオット…」


小さく呟いたその言葉すら、僕の罪は僕のことを嘲笑っているかのようで、怖いんだ。


…だからね?
それだからこその選択なんだよ、これは。
僕に残された道は、ただ一つしかない。本当は何一つ道なんて残ってやしなかったけど、差し出された手がある。願いを乞うてきた存在がいる。


自分自身を、世界を、受け入れること―
今まで目を背けてきたことに、僕自身を投影すること―


…世界を見ないことにも、もう疲れた。
舞う黄金の光が、僕がグレンであることの証なんだというならば―。
誰かに必要とされるとか、必要とするとか、そういうものは排除してさ。
僕に従ってくれると僕に膝まずいてくれた彼を…
利用して、利用されるんだ。
たとえそれだけで結ばれた関係だとしても、僕らはその関係を結んだ仲なのだから―
脆弱な絆も僕を“生きる”上では役に立つはずだ。


「これを見たらどう思うかな?エリオットは。」


自ら発した言葉に思わず苦笑いをしてしまう。


「僕がグレンだなんて君は思いもしないんだろうね」


―でも、もう違うから…あの頃とは、何もかも―


「あとには戻れない…からさ」


昔に感じた孤独感、そういうのとはまた違うけど、この後悔を孤独に変えて、僕は自分自身の責務を果たしたなら―
少しは救われたりするのだろうか?


…これは僕の戯言。
何かが見えたような気がしてはっと窓に目を向けても見えるのはぼんやりとした己の影だけ。


「結局…僕らは…」


そう少し呟いてから、“先の言葉は胸にしまっておこう”と僕は思い立った。


だってさ。
もし…
もしこれから先、誰かが、何かが、奇跡を与えてくれたときに…
全てを否定してしまって何の光も無かったら悲しいだろう?





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