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―あ……同じだ―

「綺麗…だな」と言ったエリオット。
夢の中の幻想だったのか、それとも本当に君と会えたのか―分からないけど。
嬉しい、なんて迂闊にも感じてしまう…この眼は共有出来ない『不条理』なものを映すだけだったから。

「あんた、同じだな。…言ってること。」

いつも目にする柔和な笑みとは少し違った「嬉しさ」と「悲しさ」が入り交じったような笑みをたたえたヴィンセントは「…僕にもエリオットと同じ部分があったのですね。」と静かに呟いた。

「僕は彼とは正反対ですから。…だから逆に惹かれる存在だったのかもしれません。」

「…へえ…」

―エリオットに会えたら―なんて脳裏に浮かんだ欲望。


光のベールを纏っていたのが君で、それを眩しいと…でも必死にすがっていたのが僕。
闇に向かう境界線から光へ渡ったけれど結局僕は闇のベールを纏ってしまった。
対照的な光と闇に似通った所などあるんだろうか。

「同じならよかった…君と、同じなら…」

同じになれないことを自覚した今、暗闇に手を伸ばすしかないみたいだ。
それがどんなに残酷で諧謔な現実でも立ち止まることは許されない。許されては…いけない。
ああ、必然なんてそんなもんなんだって改めて実感したから。

「それを同じだと捉えることも出来るのではないでしょうか…太陽が沈めば周りは暗く、暗がりでも太陽が昇れば周りは明るくなるのですから。」

なんで、そんなこと言うんだ…
僕は「救われちゃいけない」、と思っているのに。どうして救うようなことを言うんだよ…?

「………何なんだよ…」

“存在をなかったことにしてほしい”と懇願した僕の従者。
今まで人に好かれないような生き方をしてきたのも、孤独な世界で生きてきたのも全てその願いを叶えてもらう為だったんだろうか。

「ヴィンセント…まともなことも言えるんだな。」

まだいい慣れない名前。
仕えられているこの立場で君との関係と今の関係を比較することなんてしないけど、僕が「仕えたい」と思ったのは君だけだったよ…エリオット。

「先に進もうなんてしないよ。」

これは進むんじゃない。
道化芝居をすることも今の僕には辛いだけ。
それに…僕が生きることを許される唯一の道だから―
外から聞こえてくる切ない風の音がそれを肯定してくれているような気がした。

誰かが聞いてくれるだろうか―?

「ねえ、どうして泣いてるの?」と声を発せれば。
そう言えばまた君に巡り会える?
もしまた夢で君と会えるならば、次は僕自身ちゃんと実体を持って君と話せたら…幻想だって幸せに変わる。きっと、そう。
君との出会いがエピローグだとして、それが終わったのなら本編が幕開けするはずだ。
それはどんな幕開けなんだろう…幕の奥には何があるんだろう?
闇のベールと紅のマントを纏った僕は、ますます君とは真逆の本編を渡り合うんだろう。

「その先には…どんなプロローグが待ってるの?」



疑問が迷宮に落とされた―。





new story will start…




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