あと数分で日付が変わる時間、俺は書類に目を通しながら本日最後であろう煙草に火を点けた。
紫煙を溜め息と共に吐く。山崎の報告書という名の作文にいっきに疲れが出る。
もう怒る気力も残ってねェ…
『副長、今お時間いいですか?』
憂鬱な気分を晴らしてくれる声。
『あァ、入っていいぞ』
『失礼します。只今任務から戻りました』
『お疲れさん。報告書は後でいい。…こっちに来いよ』
『えっ?』
『疲れてるとこ悪ィが俺を癒してくれ』
クスクスと笑いながら近くに座る**に
『違ェ、ここに座れ』
と自分の膝を叩いた。
一瞬驚いた表情をしたが、素直に膝の上に跨ぎ向かい合うように座って恥ずかしそうに笑う**は可愛い。思わず口元が緩んでしまう。
**は、二年前に真選組に入隊した。
初めは勘定方に配属しようとしたが、本人がどうしても「現場に立ちたい」と言って聞かないので、個性が強すぎる隊士達の中で一番真面であろう山崎がいる監察に配属させた。
監察は、普段斬り合いになる事は少ないが危険な部署。
時には間者として相手の懐に入り情報を得なくてはいけないのだから、バレでもしたら殺されちまう。
実際、コイツも何度か危ねェ時もあった。
けれど、コイツは挫ける事もなく一生懸命に任務に取り組んできた。
そんな姿を見ているうちに俺は心を持ってかれちまった。もちろん、一人の女として好きになった。
今では、愛おしくて愛おしくて姿が見えないってだけで胸が苦しいと感じる。
**を強く抱き寄せ口付ける。
その時、自室の時計が鳴り日付が変わったことを告げる。
『問題です。今日は何の記念日でしょうか?』
『フッ…付き合って一年だろ』
『正解。忘れてると思った…』
『オイ、あんまり俺を見くびんなよ』
このまま抱くぞ、と耳元で囁けば、俺に口付けをしてくる。