ここは、かぶき町。
男と女と金と欲が渦巻く、眠らない町。
とあるホストクラブに、今宵も女達が一時の愛と癒しを求め足しげく通う。
大勢のホストの中でもTOSHIとSOUGOは、この街では名を知らぬ者はいないという程の人気のホスト。
そんな二人が居る店の名は『八木亭』落ち着いた雰囲気の店である。
TOSHIは客に友達のように接して、身近な話し相手の印象を与えるスタイル。
飲み友達的ノリでワイワイ騒いだり、客の様々な悩みの相談に乗りお客様のストレスを解消させる、という基本的なスタイルだが、誰もが振り返るほどの容姿と得意のフォローで女達の心を癒す。
SOUGOは客に恋愛関係のように思わせて店に通わせるスタイル。
女性をもて遊ぶという厭らしいイメージがあるが、客を傷つけず『一夜の遊びでも構わない』と思わせる程のテクニックを持っている。
ただし、枕営業はしない。
どんなに太客相手でも、「客とは決して性的関係を持たない」という所が女達には魅力的に見えるようで、彼の「特別な女」になりたいという女達の欲をうまく利用し、競争心を煽り、自分に振り向いてもらおうと客はどんどん金を貢ぐ。
それが彼の得意なスタイル。
ある夜、一人の女が店を訪れた。
テーブルについていないホスト達が一斉に出迎える。
店長が『ご指名は?』と聞くとホストの写真を眺め『TOSHIさんで…』と消え入りそうな声で答えた。
TOSHIは他のテーブルについており、すぐには来られないのでヘルプ要員のGINがとりあえず相手をする事になった。
『お嬢様は当店は初めてですね。お逢いできて嬉しいです』
と決まり文句を言うと、彼女は少し頬を赤らめ
『ありがとうございます…』
と言った。
GINの友達のような気軽な雰囲気が彼女の緊張を和らげ、少しずつではあったが会話も弾み楽しそうな笑みをこぼしていた。
暫くするとTOSHIがやってきて三人で楽しそうにお酒を呑んでいた。
隣のテーブルでSOUGOは、他の客の相手をしていたがTOSHI達の会話を気にしていた。
この女が自分ではなくTOSHIを選んだ事が面白くなかった。隙をみて奪ってやろうと思い、女の趣味や好みなどどんな些細な事でも情報が欲しかった。
『ちょっと、SOUGOちゃんと私の話聞いてる?』
と自分の客に言われ
『…すまねェ。仔猫ちゃんがあまりにも魅力的で、どう口説いたら俺だけのモノになるか考え込んじまいやした』
客の頬に手を添え、真直ぐに見つめる。
『SOUGO…私はもう貴方のモノよ』
うっとりとした表情で答える。