月末にあるナンバー(お店での売上の順位)の発表が気になる。
中間発表ではわずかにTOSHIに負けていた。
『アイツには負けたくねェ』
ふと、**の顔が頭に浮かぶ。
これまで『**に負担はかけたくねェ。俺に逢いに来てくれるだけでいいんでィ』
と言い高級な酒は頼ませなかった。
もちろん自分に好意を持たせる手段。
自分にだけは優しくしてくれる、自分は特別な存在だと思わせるため。
……そろそろ、金をオトして貰いましょうかねィ。
今日は**が来店を約束した日。
来店した**を愛おしそうな瞳で迎える。
楽しい時間を過ごしていくうちに**はいつもと違うSOUGOの雰囲気に気付いた。
笑顔を見せてはいるが、どこか憂いを含んだ表情をしていた。
『何かあったの?元気がないみたいだけど…私にできる事ならするから!貴方の役に立ちたいの!!』
『いや、大丈夫でィ…**は心配しなくていいでさァ』
『お願い、言って!』
『実は…TOSHIより売上が悪いんでさァ。このままじゃ負けちまう。アイツだけには負けたくねェ!それと…自分の客が掛け(ツケ)をしたまま飛んでしまい、自分が300万払わなくちゃならなくなったんでィ』
頭を抱えて項垂れる。
もちろん、客が飛んだのは嘘。**に少しでも多く金を使わせるため。
『…ちょっと待ってて!』
席を立ち、店長に断って店を出ていく**の後姿を見て口の端が上がるのを我慢できなかった。
暫く経ったころ、息を切らし戻ってきた彼女の手には封筒が握られていた。
『これで、何とかなるかな?』
心底心配した声で、俺に封筒を渡す。
封筒の中身を見ると、200万入っていた。
『…これは受け取れねェでさァ』
と突き返すと
『言ったでしょ?貴方の役に立ちたいの。SOUGOが好きだから…』
『…こんな情けねェ姿をアンタに見せたくはなかったんでィ。俺も**の事が好きだから』
『ありがとう、SOUGO!』
何の疑いもなく、心からの笑顔をみせる**の瞳を何故か直視できなかった。
理由は解らないが心がチクリと痛んだ。