『おりょうちゃぁあああん!結婚してくれェエエ!!』
『ノーサンキュ――!!!』
顔面に本気蹴りを喰らい吹っ飛んでいくバカ…もとい私の彼氏を見送る。
あれ?アイツって私の彼氏だっけ??
偶然町で見かけた「女に蹴り飛ばされながらも大声で笑ってる、通りすがりのバカ」であって欲しい。
でも、現実には紛れもなく私の彼氏。
『**ちゃんも大変ねぇ、バカの彼氏なんて持つと…どうにかならないかしら、あの病気』
おりょうちゃんと彼の騒ぎを見ながら、お妙ちゃんが呟くように言った。
『お妙ちゃん…あの病気は死なないと治らないよ』
『そうよねぇ…』
彼、坂本辰馬と出会ったのは半年前。
甘味屋でお団子を食べていた時に、声をかけられた。
所謂、ナンパ。
アッハッハッハッハ…と、やたら笑っているサングラスをかけた胡散臭い男だったからやんわりとお断りしたんだけど、しつこくて。
『わしとおまんが出逢ったのは運命じゃ』
とか
『おまんと幸せになる為に、わしはこの世に産まれたんじゃ』
とか
『好きで好きで好きで…気が狂いそうじゃ』
猛烈アタックを喰らう事一週間。
毎日私の前に現れてたのに来なくなった。
その日から、なんだか淋しくて。
逢えないのが辛くて。
仕事の合間とか、ご飯を食べてる最中とか、お風呂に入っている時とか、気が付くと彼の事ばかり考えてる私。
いつの間にか彼が私の心に居座っちゃってて。
どうやら、私は恋をしたようです。
自分の気持ちに気付いた数日後、目の前に現れた恋い焦がれた人…坂本辰馬がいた。
思わず彼に抱きついた私に、驚いた顔だったがすぐにいつもの調子で
『**は可愛いのう。そがにわしに逢いたかっただがか?』
そう言われ頷くと、いつものおバカな感じではなく胡散臭いサングラス越しに見えた真剣な眼差しに、完全に心を持っていかれた。
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