JOY4 | ナノ
『…帰って来たか?』

玄関側でカタカタと小さな音がし、出迎えようと起き上がった。
…が、どうやら隣人らしい。


大きくため息を吐き、煙管に火を点けた。
ゆらゆらと漂う紫煙を見つめていると**の見慣れた笑顔が現れた。
話しかけようと口を開いた途端、煙と共に消えていく。




静まり返った部屋で時計の音だけがカチカチカチ…と響いて寂寥感をつのらせる。


『早く帰ってきやがれ。俺に寂しいと思わせんじゃねェよ』


あぁアイツは……
**はいつもこんな気持ちでいつ来るか解らねェ俺を待っているのか?

**の気持ちなんざ、ちっとも考えていなかった。







カチカチカチカチカチカチ…

次第に耳障りになってきた時計を刀を鞘に納めたままぶっ叩いた。

ガシャン、と大きな音をたて硝子を散らばせながら床に落ちた時計に、ざまあみろ。と悪態をつく。


気分が幾分軽くなり、再び寝転がり眼を閉じた。






ウトウトとしかけた時、ガチャリと玄関が開き**が部屋に入ってきた。


『ただいま、晋助』

『…あァ。腹減った。酒と肴持って来い』

『はいはい』

と、背中を向けている俺に答える**は、きっといつもの笑顔でこっちを見ている、と声色を聞いて解る。




台所に移動し、酒の用意をしている**に後ろから抱きつく。

『今日は甘えん坊さん?…私が居なくて寂しかった?』

『…ほざけ』

フフフ、と笑う**をさらに強く抱きしめた。



END


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