あれから一か月ほど経ち、私もだいぶ回復し日常生活に支障はない。

『**、ご飯出来たッスよ!早く来ないと冷めるッスよ。』

『はーい。今行きます。』


来島また子は、初めこそ私に冷たい態度をとる事も多かった。

『また子殿は、晋助が大好きなんでござるよ。根はいい子だから許してやって欲しいでござる。』

河上万斉が笑いながら言った。

今では、一緒に買い物にも出かける仲だ。

晋助、万斉、また子、武市と共に食卓につく。

『おはようございます。』

『今日もお綺麗ですねぇ。麗しい方とお食事をするのは、ご飯が何倍も美味しく感じられますね。』

武市変平太は、どうでもいいリップサービスを毎日言ってくる。


万斉が、今日の予定を皆に伝える。最近は皆とても忙しいみたいだ。ここ最近、晋助ともゆっくり話せない。

『もうすぐ京に着くが、**殿はどうするでござるか?』

『京に行くなら町に行きたいでのすが…。以前お世話になった置屋のおかあさんにも逢いたいので。』

『晋助、いいでござるか?』

『あァ。お前ェは、芸もまともにできねェんだから芸鼓になるなんて言うんじゃねェぞ。置屋に迷惑掛っちまうからなァ。』

『はいはい、解っていますよ。日暮れまでには帰ってきます。』

ご飯を食べ終え、皆仕事に出かける。


私も身支度を整え、部屋を出ようとした時に晋助に呼び止められる。

『まだ本調子じゃねェんだ、無理すんなよ。また寝込まれちゃ敵わねぇからな。…柊と桃はまだ戻れねェのか?』

『うん。事後処理で大変みたいです。刀が折れちゃったですし。』

おどけて言うと

『お前ェが故意に折ったんだろうがよ。』

ククク、と晋助も笑う。

『今日も遅いのですか?…お待ちしております。』

『あァ…行ってくる。』

頭を撫でて出かけていった。

彼の後姿を見て何故か苦しくなった。

晋助が傍に居ないと不安になる…寂しいとさえ思うようになっていた。


京・祇園ー

置屋のおかあさんに挨拶をした帰りに反物屋による。

桃に着物を作ってあげたくて反物を買いに来た。

色とりどりの反物を見ているとワクワクした気分になる。

『お気に召したんありますやろか?』

『大事な友人の結婚祝いに着物を仕立ててあげたくて。どれがいいかしら?』

『これなんかどうどす?お歳にもぴったりやと。』

『わぁ!素敵…これにします。あと帯と帯留もください。』

『おおきに。』


反物屋をでて次の目的地に行くため町を歩く。町はずれにある刀剣店に立ち寄る。

師匠から頂いた刀は、刃毀れがひどく使えそうにない。新しい刀を買いに来たのだ。


鬼兵隊にいるという事は、常に危険と隣り合わせという事。

今もこうしている間に斬りかかってくる輩がいるかもしれない。

せめて、皆に…晋助には迷惑をかけたくない。自分の身は自分で護らないと…


値段を言うと、店主が数振(ふり)持ってきた。

鞘から少しだけ刃をだし確認する。

手に取り一番しっくりいった刀を購入した。


外に出ると、日が暮れかけていたので急いで船に戻った。


万斉とまた子は今日は戻れなくなり、武市も遅くなると言われた。


夕食を終え、購入した刀を持って甲板に立つ。

刀を抜き、月光にあてる。

青白く妖しく輝く。

改めて、刀の美しさを実感する。





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